どちらも、最後の攻撃を行う力しか残っていない。自分の攻撃力を抑えて、相手の攻撃の回避に専念し、次の一撃で倒す事も考えたが、力を抜くと回避する前に私が消滅させられる可能性が高い。
私は震える手で剣を握り直した。深く息を吸い込み、精神体の維持を除いた全ての精神エネルギーを剣に集約させる。
最後にして、究極の一撃。神術でも魔術でも無く、『私そのもの』を燃焼させるのだ!
シェ・ファも自分のエネルギーを剣へ注いでいる。彼女の剣は白く輝き、まるでS.U.Nの光を至近距離で見るかのようだ。
互いの力が頂点に達する!
「行くぞ!」
私の全身、剣、鎧の全てが精神エネルギーの炎で覆われる。触れるものを瞬時に焼き尽くす炎。
「永劫火!」
S.U.Nを超える超高温、そして精神体をも消滅させるエネルギー密度を持った劫火がシェ・ファに直撃する!その刹那、
「起源の白」
シェ・ファが劫火に向けて剣を振り抜いた!
炎が白を飲み込む!だが飲み込んだ瞬間、白が炎を貫く!
それが一瞬の内に、何度も何度も繰り返される!
私達の剣を中心点として、惑星シェ・ファが放射状に崩壊していく……
白が眼前に迫る!私の劫火は殆ど消し去られてしまった。
剣が折れ、鎧が砕け、私の体は半透明だ。もう……維持出来ない。
何もかもを諦めかけたその時、背後で声が聞こえた。
「ルナさん、私の力を使って」
シェルフィア!?一体何を?
体の中心に、細くて柔らかいものが入っていく。まさか!?
「やめろ!」
「ごめんね」
彼女が、宝石シェ・ファを握り締める。瞬時に彼女は肉体を失い、精神体となった。
「『私』を貴方に預ける。だから負けないで!」
シェルフィアそのものが、私の中に入った。私は涙を流しながらも、力で満たされるのを感じた。
「うあぁぁ!」
私は半狂乱になり、スクリュー状の永劫火を再度放った!
その一撃は、白を引き裂きシェ・ファの胸へと到達する。
最後の瞬間、私が見たのは優しく穏やかな目をして微笑んでいる彼女の顔だった。開かれた瞳からは涙が零れ、その雫に私が映っている。
「強くなった『私の子供達』……。私はこれからも貴方達をゆっくりと見守っています。貴方達が選んだ『生きる』という選択、それには多大な苦難が付き纏います。しかし、誰かの為に生きる事が出来る強さ……、それがある限り、乗り越える事が出来るでしょう。私(シェ・ファ)はもう、母として貴方達に干渉する事はありません。思うように生きなさい。願わくは、光溢れる未来を」
彼女は再び目を閉じた……
今の彼女が、12の魂の支配から解放された、『この星』としての彼女なのだ。
私は無意識に嗚咽を漏らす。
シェ・ファは、永劫火と共に、大地の奥へ、奥へと沈んでいく。
私は、大いなる母の微笑みを胸に抱き、自分の体が光の粒となり消えていくのを、唯じっと見詰めていた。