私はそう言うと、オリハルコンの剣に『光(sunlight)』を込めてキュアに振り下ろした!
「ピカッ!」
「ドゴォォ……ン!」
光が、空諸共彼女を裂き、衝撃波が聖域を激しく揺らしたのを感じた直後、私は力が空っぽになり聖域へ落ちていった。
「ママー!」
私を心配する優しい娘の声……
「フワッ」
あれ?落ちたのに何の衝撃も無い。一体?
「もう、ママ!自分の命を大事にしてって言ったでしょー!」
私はリルフィの『保護』と『治癒』に包まれていた。
「はぁい……。ごめんね」
聖域に叩き付けられ気を失っているキュアを確認して、私は目を閉じる。その時だった。
「カッ!」
遠くで、これ迄感じた事の無い強大な光が発現した。同時に、夜空を全て吸い込むような完全なる闇も顕れる!
刹那の後、星が激しく振動を始めた!
「ルナさん。皆」
私とリルフィは手を合わせて祈った。
〜人間対魔〜
ルナからの連絡後30分以内に、俺達は戦闘準備を終えていた。
「来るなら来い!」
俺は『聖剣』を強く握る。この剣は、かつての『力の司官』であった証。
そう、俺とジュディアはミルドの最前線で戦うのだ。俺は街の中心部の高台に立ち、何処で戦闘が始まってもすぐに駆けつけられるようにしている。また、ジュディアはミルド上空を巡回している。殆どの天使は空を飛べなくなったが、俺とジュディア、ノレッジがまだ飛べるのは有難い事だ。
街全体はルナの『結界』で覆われ、魔の攻撃を受け付けない。だが、一点集中攻撃には脆い。結界の一部が破損するのに、大した時間はかからないだろう。
だから、俺とジュディアは見張っている。結界を守る為には、誰よりも早く敵を見つける事が肝要だからだ。
ウィッシュには、非戦闘員である女、子供達を守る砦の役目を与えている。ミルドの地下に建設した、避難施設の入り口を見張っているのだ。無論、俺達が水際で食い止めるので、其処まで敵が侵入する事はまず無いだろう。だが、俺達の攻撃を掻い潜る事は有り得る。
この半年間、ウィッシュは俺の下で剣の使い方を覚えた。その上達は目を見張るものだった。大丈夫、あいつは俺の息子だ。いざ戦闘になっても、軽く魔を倒してくれるだろう。
その時、ジュディアの意思が転送されてきた!
「(セルファス!東南東から敵の襲来よ!数は……数万!?)」
「(数万!手加減無しだな。それだけの数だと、結界の外から遠隔攻撃だけじゃ足りねぇだろう。俺は結界の外で戦う。援護は頼んだぜ!)」
「(解った。死なないでね!)」
「(大丈夫だ。俺はお前の夫で、ウィッシュの父親だぜ。)」
俺は上空に向かって拳を振り上げると、東南東に飛んだ。街の人間にも指示をする。
「敵は東南東から現れた!東ブロックと、南ブロックの者は俺が合図を送り次第攻撃を行え!」
「了解!」
頼もしい声を背に、俺は結界の外に出た。敵が目前に迫る!星空と雲の全てを覆い隠すかのような軍勢。背筋が寒くなるのと同時に、血が沸き立つのを感じた。
「行くぜ!」
俺は敵へと向かう!ジュディアの保護が俺を包むのを感じた!
「ガハハハハ!元天使風情が、我ら『選ばれし魔』に勝てると思うなよ!」
魔の軍団を率いる、先頭の魔が俺を嘲笑う。他の魔よりも一回り大きく、全身に鎖が格子上に巻かれている。恐らく、リーダーだろう。
「ギャギャギャ!」
リーダーの後に続いて、他の魔も不気味な笑い声を上げた。
だが、関係無い。俺は街へ侵入しようとする者を排除するのみだ!
「貴様……このケージ様を無視するとはいい度胸だ。行け!お前達!」
自己主張の強い魔だ。いいぜ、戦い甲斐があるってものだ!俺は剣を振り上げた。これは戦闘開始の合図!
「ドドドーンッ!」
「ピキピキッ!」
無数の砲撃と共に、ジュディアの神術が魔の大軍に炸裂する!
「ギャァァ!」
爆音の後に墜落していく魔。俺は聖剣をケージに向けた。
「面白い……。俺様の力を思い知るがいい!究極魔術『獄闇』!」
奴の周囲が高密度の暗黒に覆われ、その闇が集約されて俺に襲い来る!
「ルナは……こんな化け物を相手に戦って来たんだな。たった一人の女の為に」
俺はルナの強さを身に染みて理解した。だが、今の俺も愛する者の為に命を懸ける覚悟は出来ている。
「究極神術『雷光』を聖剣に集約し、闇を切り裂く!」
俺は雷光に包まれた剣を獄闇に振り下ろす!
「ピシッ!」
獄闇は呆気なく真っ二つに割れた。だが!
「かかったな!」
さっきの獄闇よりも巨大なものが数十!俺の周囲を取り囲んでいたのだ!さっきのは囮だった!避け切れない!
「うぉぉ!」
俺は精神を集中し、全身を『雷光』で覆った!
「ゴォォ!」