ずっと守っていこう。傍で微笑んでくれる彼女を。そして、永遠の幸せを創っていこう。それが、一つの生命としての僕の意味だから。キュアのお陰で魂に刻まれた、温かく力に溢れた生きる意味だから。
〜半年間〜
ルナリートとの約束の半年間、僕達は大忙しだった。
僕とキュアの婚姻の儀を執り行い、その後は獄界全体の戦力向上を図った。僕達が模範となり、皆自分の大切な者の為に戦う誓いを交わしたのだ。
必死だった。恋人の為、子供の為、死んでいった友の為……。皆それぞれに大切な者は違う。だが、平和で光溢れる未来を創る為には勝利する他に道は無い。半年後、僕達が負ければ未来永劫僕達の子孫は光を浴びて生きる事は無いだろう。
ルナリート達に負けを突き付け、人間界を僕達の世界にする。人間達は死にたくないなら、獄界に移り住めばいいだろう。光が届かず、闇の海と溶岩に囲まれた暗き世界に。
ルナリート、人間達が強い理由が解った今、僕達に負ける要素は無い。
「フィアレス様」
決戦前夜、僕とキュアは宮殿の屋上で薄紅く染まった暗黒の海を眺めていた。
「もういい加減、『様』は止してくれよ。僕達は夫婦なんだ」
そう言って、僕は彼女の短めの黒髪を撫でる。この半年で、幾度撫でた事だろう?
「はい、でも幼馴染の頃から私は貴方を『フィアレス様』と呼んでいたから、なかなか直らなくて」
照れくさそうに笑った。その一つ一つの仕草が愛しい。
「まぁいいや。先は長いんだし。ところで、何を言おうとしたの?」
僕が首を傾げると、彼女は無言で自分のお腹を優しく擦った。
「ううん、何でも無いわ。早く戦いが終わって、平和に暮らせる事を祈ってるだけ」
明日から熾烈な戦いが始まるというのに、彼女の顔には無限に零れ落ちる程の幸せが満ちていた。
この日も僕は、キュアと共に眠った。眠りというのは、全ての者が最も無防備になる時。そして、最も心が解き放たれる時。その時に、愛する者が傍で一緒に眠ってくれる。それは、この世界でようやく見つけた魂の安住の場所。飛び疲れた翼を休められる唯一の場所なんだ。これは、自分の命よりも尊い。
獄界に住む全ての者は、この夜を各々自由に過ごした。
この夜は二度と訪れない。大切な夜を、掛け替えの無い者と共に……
〜深夜〜
獄界の全てが寝静まった深夜、僕はふと目を覚ました。全身にびっしょり汗を掻いて……
「ん……どうしたの?凄い汗!?」
僕の腕の中で眠っていたキュアが驚いて声を上げる。
「いや……何でも無いよ。起きたら戦いが始まる、だから緊張していたのかもしれない」