「約束するよ。次の戦いを最後に、争いの無い世界を。この星に住む者が血を流さずに済む世界を」
「未来の幸せを皆が夢見て暮らせるようにね」
私達がそう言うと、リルフィは涙を浮かべて首元に抱き付いた。
「何処にも行かないでね。ずっと傍にいてね!わたしは、パパとママが居ないと生きていけない!」
不安で仕方無いのだろう。先日の戦いで、私は死と隣り合わせの戦いをした。リルフィはそれまで、生死を懸けた戦いを見た事が無かった。そして、半年後に再び大きな戦いがある。全員が無傷という訳にはいかない。
「大丈夫、ずっとずっと一緒にいるよ」
「ママがパパと『永遠』を約束したように、私達家族は『永遠』に離れないわ」
そう言うと、リルフィの目に溜まった涙は勢い良く流れ落ちた。
「うわぁーん!わたし、怖かったの!パパとママが消えてしまうんじゃないかって!」
私達は彼女をギュッと抱き締めながら、髪と背中を撫で続ける。
そしてふと見上げると、全てを見透かしているかのような、星を散りばめた天空が私達を包みこんでいた。
この夜は、リルフィが眠るまで3人でベッドで寄り添った。
その後、私とシェルフィアは夫婦用の寝室に移動する。
高く昇った月明かりが窓から射し込み、シェルフィアの美しい顔を薄っすらと照らす。
「ルナさん」
私達は強く抱き合い指を絡ませながら、悠久とも思える程長い時間口付けを交わした。
「……何も心配いらないよ。来年の今頃には、何事も無かったかのように暮らしてるさ」
彼女は私の胸に額を寄せる。私はそっと髪を撫でた。
「私も、あなたが傷付く所は見たくない!」
母親としてシェルフィアは強い自分を演じているが、彼女だって一人の女性だ。
「フィアレスと私の力はほぼ互角。強い心を持っている方が勝つだろう。でも、『永遠の心』を胸に刻んでいる私は負けないよ。傷は負うだろうけど、死なない。私には生きて帰るべき場所があるから。まだまだ幸せな未来を創っていきたいから」
彼女の額が更に深く胸に押し付けられる。
「……大好きだから、絶対に死なないで。何があっても、ルナさんの命を大切にしてね。私にはあなたが必要なの。勿論、リルフィにも」
シェルフィアは私の手を強く握り、話を続ける。
「『永遠の心』で私達は離れないけど、次に生まれ変わる時はいつになるか解らないわ。私は生まれ変わって、普通の人間よりもずっと長い命を与えられた。でも、エファロードであるあなたよりはずっと短く儚い。だから、私の命の一秒一秒を全てあなたと過ごしたいの」