「……いいだろう。今日から丁度『半年後』、僕は精鋭を連れて再び現れる。ゴホッ……僕に止めを刺さなかった事……必ず後悔させてやる!」
胸を貫かれ、一振りで自分を殺す事が出来る刃を眼前にしても、気高き信念が刻まれた表情は変わらない。
「半年後、俺は今度こそお前の信念を砕く!」
「次に会う時こそが、真なるエファサタン誕生の日だ!」
その叫びと共に、フィアレスは獄界へと戻った。
暫しの静寂の後に、髪を撫でる穏やかな風が吹いた。その瞬間、『俺』は『私』に戻る。
一気に力が抜けた……。背中の翼が消え、髪が銀からいつもの紅に戻る。
「ルナさんっ!」
「パパぁ!」
私の愛する妻と娘が心配そうに抱き付いてくる。私は二人の髪をそっと撫でながらも、疲労で今すぐ眠りそうだ。
「心配しなくても、私は大丈夫だよ。だから、今はちょっとだけ眠らせてくれ」
私はそう言うと、シェルフィアの膝に頭を寄せた。
次に目覚めたら、獄界の植物を切り倒して世界中の人間を目覚めさせる。その次は、半年後に備えなければ。
シェルフィアもリルフィも良くやってくれた。まさか、リルフィがあれ程の力を発揮するとは……。
「おやすみ」
私の意識が眠りに溶けて行く中、澄んだ優しい声で二人は私にそう言った。