【第四節 目覚めと約束】
「ただいま!」
私達は、心配するセルファス達の所へと戻ってきた。そこには、先程まで居なかったノレッジと恋人のレンダーの姿も在る。
彼は、戦いの衝撃の大きさを感じ取り、眠っているレンダーを連れて駆けつけたのだろう。本来ならノレッジはリウォルを離れるべきでは無いが、緊急事態だから仕方ないと言える。
「まずは、何が起こったかを説明しよう」
私はそう切り出した。シェルフィアとリルフィの説明も交えながら、簡潔に事実を皆に伝える。
動揺が走った。獄王フィアレスが、この世界に現れた事。そして、壮絶な戦いの末に半年後を約束せざるを得なかった事に対してだ。暫しの沈黙の後、ディクト達学者が口を開く。
「……我々人間は、10年前戦わずして平和を享受出来ました」
「先代皇帝と、リバレス様の尊い犠牲によって」
「私達はいつでも戦う覚悟は出来ています。武器の研究と進歩に尽力してきたのは、いざという時に平和を守る為です」
そうだ。10年前私とシェルフィア、兄さんとリバレスで天界との戦いを決意した時、人間達も戦う覚悟は出来ていた。兄さんが獄界からの侵攻を一人で完全に防いだ為、人間は戦う必要が無かったのだ。
「すまない、それが最も血を流さずに済む方法だったんだ」
私が申し訳無さそうにそう言うと、セルファスが力強く私の肩を叩く。
「気にすんなって!半年後、お前がもう一度獄王に勝って、俺達も魔の大群を倒す。それで済むさ」
「そうですよ、ルナリート君。人間界には、強い結束と高い科学技術があります。昔のように、人間が一方的に魔からの攻撃を受ける事は無いでしょう」
そうだな、決めた事を悩んでも仕方が無い。今の現実を見据えて、最善の策を講じるだけだ。
「パパ、皆さん半年後の事より、今すぐに取り掛かるべき最も大切な事があります!」
声を上げるリルフィを皆が驚きの眼差しで見る。
「眠っている人々を早く起こさないと!」