ウィッシュに近付いた狼が結界に弾き飛ばされ、そんな叫び声を上げた!この結界は恐らく、銃火器でも破れはしないだろう。それぐらい、リルフィの力は強力だった。この神術が、生まれて初めて使った神術にも関わらず……
「後は、狼を追い払う!」
リルフィが群れを睨むと、群れの足元から巨大な火柱が渦を巻いて天空へと昇る!狼は火柱を咄嗟に避けたが……
「ウォーン!」
一匹の狼の鳴き声と共に、群れは全て逃げ出した。これだけ圧倒的な力の差を見せつけられて戦意を喪失したのだ。
「良かった。ウィッシュ大丈夫!?」
狼が去った後、リルフィはすぐにウィッシュを抱き締めた。
「うん……ぼくはもっと強くなって、今度はリルフィを守るよ」
そう言って、ウィッシュは意識を失った。
「リルフィ!ウィッシュ!」
そこで、リルフィは聞き覚えのある声を聞いた。
「パパ!ママ!ウィッシュのお父さん、お母さん!」
そう、二人の両親が全員集っていたのだ。
「強い神術のエネルギーを感じたから来てみたら……リルフィだったのか!?」
「ウィッシュ、酷い怪我!」
こうして、場は一時騒然としたが、シェルフィアとジュディアがウィッシュの治療を施してようやく落ち着いた。
二人は遅い時間まで出歩いて心配をかけた事は怒られたが、それ以上に褒められた。
リルフィの親思いの心、危機に瀕してウィッシュを守った強さ。
ウィッシュの、自分を犠牲にしてでもリルフィを守ろうとした強い決意。
また、その二人の親である4人も皆自分の子供が誇らしかった。人に優しく健やかに成長している事に。
しかし、神術を教えていないリルフィが作った結界の跡と、焼け焦げた地面と木々を見てルナリートは思った。
「(妻も娘も……怒らせると大変な事になるな)」
この日見つけたルナ草は、リルフィの部屋で大切に育てられる事になった。
しかも名前がつけられ、「ウィッシュ」と言うらしい。
時は、穏やかに過ぎて行く……