その時だった!
「グルルルルルルル!」
二人の周りに狼の群れがいた!数は十数頭!
「ガウッ!」
その中の1匹が不意に飛びかかった!ウィッシュはすぐさま木の棒に渾身の力を込めて叩き落とす!
「キャウンッ!」
叩かれた狼はすぐ群れに戻り、二人の周りを旋回し始めた。隙を見せれば一気に襲われる!聖石を使えば逃げられるが、生憎聖石はリュックサックの中でそれを出す暇など無い!
「……ウィッシュ!どうしよう!?」
「大丈夫!ぼくが追い払うから!」
ウィッシュはそう叫び、棒を両手で強く握りしめた。ぼくは尊敬する強い父親セルファスの息子だ。絶対に負けない!と胸に誓いながら。
「うぉぉ!」
およそ7歳とは思えない程の気迫を狼達にぶつける!その様子に驚いた狼は、今度は3匹以上が同時に襲ってくるようになった!
「リルフィは絶対にぼくが守るんだ!」
ウィッシュは見事に狼達を捌き、そして攻撃する!この技術は、セルファスの教えによるものだ。男は強く在らなければならないという思想が息子にもしっかりと息衝いている。しかし!
「キャァー!」
標的がリルフィに変わったのだ!咄嗟にウィッシュはリルフィの前に出る!
「ガブッ!」
「うわぁぁ!」
ウィッシュが腕を狼に噛まれた!流血が地面を真紅に染める!
「ウィッシュ!いやぁぁー!」
リルフィが叫び、ウィッシュは痛みと出血で動けずにその場に座りこんだ!それをリルフィは必死で抱きかかえる!
「ガルルルルルル!」
狼の群れは二人の様子になど構う事は無く、止めの一撃を喰らわせようと間合いを詰める!
「(わたしが……何とかしないと!ウィッシュを守らないと!)」
その瞬間、彼女は強い目を携えて立ち上がった!
「まずは……ウィッシュを守る!」
リルフィがそう叫ぶと、ウィッシュの周りに強い結界が出来た。そう、神術で生み出されたものだ。普通、神術の発動には脳内での術のイメージとそれを呼び出す術式が必要だ。だが、リルフィにそれは必要無かった。術式というものは、神であるエファロードが天使達に与えたものであり、強い力を持つ者に術式は必要無い。唯、脳内で神術の結果をイメージするだけでそれを発動させる事が可能だ。勿論、天使が使えない禁断神術以上神術には術式が必要となるが……
「キャンッ!」