突如草むらから音がする!ウィッシュはすぐに棒を構えて、リルフィの前に出た!何があっても彼女を守る為だ。二人の心拍数はピークまで上がった!……しかし、小さな鼠が通り過ぎただけだった。二人は安堵の溜息をついた。
「ふぅ……びっくりしたぁ」
「ウィッシュ、守ってくれてありがとう!でも、そろそろ時間が……時計は持ってないの?」
「ぼくは持ってないね。リルフィも?」
「うん……どうしよう……時間がわからない」
「多分まだ大丈夫だよ、もう少し探したら帰ろう!」
「うん……わかった」
この時、時刻は既に5時を過ぎていた。だが、森は常に薄暗く所々に灯りが設置されていたので時間の変化を感じにくい状態だった。灯りは、森の中で人が踏み込んだ領域までは所々に設置されている。
だが、更に歩くとついに灯りさえも途絶えた。そう、人が踏み込まない領域まで辿り着いたのだ。
「ウィッシュ!暗いわ。何も見えない!」
「大丈夫……ぼくがいるから!ほら、向こうに灯りが見えるよ!」
半ば強引にウィッシュはリルフィの手を引っ張った。リルフィは、涙を浮かべながらも懸命に走る。すると……
「あっ!?月が出てる!」
ウィッシュは驚きの声を上げた。遠目に見えていた灯りは月の光だったのだ。こんなにも月の光が眩い……そこで初めて、時刻は5時などとっくに過ぎてしまっていた事を理解した。
「うわーん!」
リルフィはついに泣き出した。父も母も絶対に心配している。自分が怒られる事より、大好きな父母を心配で悲しませる事が何より辛かったからだ。その様子を見て、ウィッシュは深く反省した。
「リルフィ……ごめん。ぼくがリルフィのお父さんとお母さんに謝るから泣かないで!」
ウィッシュはリルフィの背中を優しく擦りながらそう言った。その時!
「……あっ!ルナ草!」
リルフィの涙で滲んだ目に飛び込んできた白い花……月光の光で咲くそれは紛れも無くルナ草だった。これを持って帰ったら、お父さんが喜んでくれる。リルフィの心はそれで一杯になり涙が止まった。しかし、ルナ草は切り立った崖の頂上にあり崖を登らなければ摘む事は出来ない。
「心配しないで、ぼくが取ってくるから!」
ウィッシュはそう言うと躊躇いなく崖に走ってあっと言う間に登り切った。リルフィを悲しませた分、それを挽回したかったからだ。そして、花を摘んで彼は戻った。
「はい!これで喜んでもらえるよ!」
「うん……本当にありがとう。とっても嬉しい!」
「よし、後は一刻も早く帰るだけだね」