湖は月光を浴び、山々は星明りに照らされる。また、焚き火の赤が空まで立ち昇っているような感覚さえ覚えた。この場所は、静寂が支配しているが確かな生命の力強さも感じる。それは、かつてこの場所で永遠を誓い……今もこうして愛する人と、愛する娘と共にいられるからかもしれない。
「綺麗な景色」
格別に美味しい夕食を食べ終わり、今は3人で焚き火の傍で景色を眺めている。初夏とは言え、森の中で湖の傍ともなると夜は冷え込む。だから火の傍でリルフィを包みこむようにシェルフィアが座り、そのシェルフィアを包むように私が座っているのだ。
「リルフィはこの景色が一番好きね。初めてリルフィをここに連れて来たのは、まだ言葉も喋れない時だったわ。どんなに泣いていても、ここに来たら泣き止んだ。だから、パパに頼んでよく連れてきてもらったの。ね、ルナさん」
「ああ、そうだよ。リルフィは昔はよく泣く子だったから、一日に何度もこの場所に来た事もある。それも楽しかったけどな」
私はそう言って、シェルフィアとリルフィを少し強く包みこんだ。
「うーん……わたし覚えてないよ。でも昔から好きだったって事は解るわ」
「ふふ、覚えてなくてもそんな事があって今のリルフィがあるのよ。それは忘れないでね。これから先も色んな事があると思うけど、パパとママは変わらずあなたを想い続けるわ」
「ずっとずっとな」
私とシェルフィアがそう言うと、リルフィは私達の方を振り返り……
「パパ、ママ……わたしもずっと想い続ける!……大好きだから何処にもいかないでね」
「大丈夫(だ)よ」
私達がそう答えると、彼女は何も言わなくなった。これは……
「……眠ってるわ。今日は朝早くから張り切って動いてたからね。私と一緒にルナさんを喜ばせたいって嬉しそうに」
「そうか……こんなにいい子に育ってくれて、本当に嬉しいよ。心はシェルフィアに似たんだな」
「もう!またそんな事を言うでしょ?この子は、心も身体も私達を半分ずつ受け継いでるわ。本当に子供って不思議……二人から生まれて、一人なのに二人分を受け継いでる。それに、愛情を注げば注ぐ程大きくなって……いい子に育つ。ね?」
「そうだな。不思議だよ。日が経つ毎に愛しさが増して、自分自身も強くなれる気がする」
私達はそう言って強く手を握り合った。そして、リルフィを起こさないようにそっとキスをした。湖から優しい風が吹く……その風が水面を揺らし、キラキラと月明かりを反射させている。
「ルナさん、ずっと家族で幸せに生きていこうね」