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 ルナとハルメスさんは拳をぶつけあう。これが、兄弟の強い絆なんだ。そして……ハルメスさんは……最後まで強かった。もうこれで……会う事は出来ないのに……笑顔だったからだ。

「皇帝、行ってきます!それから……どうかご自愛を!」

 でも、シェルフィアがそう言った言葉に対してハルメスさんは振り向かなかった。

「ああ、俺の心配はいらないぜ!お前達……何があっても……前へ進むんだぞ!」

 肩が震えていた。泣いているんだ。わたしはその背中を見て堪えられなり、涙を流した。勿論、ルナ達に気付かれないように。

 

 

そして……長かった戦いが終わった。

 

 

「ふ……親父も……最後に俺の姿が見たかったのかい?」

 神術によりその姿が映像となって現れたのは、ルナとハルメスさんの父である神……彼との戦いに決着がついた後だった。ハルメスさんは輝水晶の遺跡で、全身から血を流し……目も見えなくなっている。『魔』との戦いで致命傷を負い……それでもなお、自分の命を捧げる為に遺跡へと向かったのだろう。わたしの目は……涙で溢れて何も見えなかった。

 

「ルナ、ここは輝水晶の遺跡だ……悪いな……約束は守れないぜ……後の事は宜しく頼んだ。獄界への道は……俺の魂で封鎖させる。シェルフィアといつまでも仲良くやれよ」

 

「兄さん!やめろ!やめてくれ!」

 ルナが叫ぶ……黙っててごめんね……

 

「……ルナ、そんな悲しい顔をするなよ……見えなくても俺にはわかってるんだぜ……俺の魂は……この装置の作動に使うけど、消えるわけじゃない。俺はティファニィと一緒なんだ。心配するなよ……唯、会えなくなるだけだ……これが……俺の生まれた意味だからな……ティファニィを愛し……獄界を閉ざす事が」

 ルナは必死でハルメスさんの映像の下へ飛んでいく……ハルメスさんを失う事……それで悲しむルナを見るのがわたしには堪らなく悲しかった。

 

「またな」

 

「兄さん!兄さぁぁ……ん!」

 

 虚しく声が響き……ハルメスさんの映像は消えた。彼は……自分の進むべき道を全うしたんだ。頭ではそうわかっていても、心が張り裂けそうになる!

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