でも、その後……悲しみに暮れながらもルナ、大切な決断をしたわねー……天界を維持する『椅子』に座るかどうかのね……
「……今、『神の継承』を受けて……『記憶』が全て目覚めました。私は、天界の統治者……でも、あの椅子はもう必要ありません。天界は……今日を持って人間界と同化します」
そう……それで良かったのよー……それでルナはシェルフィアと幸せになれるからね。
「そうか……運命を変えるのだな。それも良かろう。今日が歴史の変わり目となる。……ESGを摂取出来ない天使は、やがて力を失い人間と同化していく事だろう。人間だけが創り出す世界……だが、例外はある。お前と……シェルフィアだけは力を失う事は無い。お前達が……人間界を支えていくんだ。そろそろ……時間だ……我もハルメスの下へ」
神は……砂のように消えていった。最後は……ルナとハルメスさんのお父さんとしての顔だった。
後は……わたしだけねー……
「……これから大変になるだろうけど、シェルフィア、君がいれば大丈夫だから……唯……全ての人々の幸せの為に……いや、何より私達の幸せの為に生きよう!帰ったら……式を挙げような」
深い悲しみの中で二人は抱き合っていた。うん……この二人は強いから大丈夫……わたしが消えても……
「リバレス、お前もこれからずっと宜しく頼むよ」
ルナ、ルナならきっとそう言うと思ってたわー。優しくて……わたしを大切にしてくれたルナ。
「良かったわねー……ルナ、シェルフィア」
わたしの口から思わずそんな言葉が出た……殆ど無意識だった。
「急にそんな顔をしてどうしたんだ?」
もう何も隠す必要は無い。でもわたしの心は、風のない湖面のように静かだった。
「……今までありがとう……ルナが主人で良かった。そして、大切な人が出来たからわたしは笑ってサヨナラ出来る」
素直な言葉が次々と溢れる。本当に感謝してるから……誰よりも大好きだから……
「何を言ってるんだ!?変な冗談はよせよ!」
ルナは取り乱して、わたしを捕まえようとする。でも、わたしは逃げた……決意が鈍りそうな気がするから……
「……わたしは『天翼獣』……天界で生まれ……天界と共に消えるの……わたしはその事を知ってたわ。ハルメスさんと約束したの……ルナとシェルフィアを幸せにしようって」