「(でもね……ごめん、今までこんな風に騙したりする事なんて一度もなかったのにねー)」
この後、ハルメスさんが名付けた『ティファニィ流星群』を眺めた。一生って……流れ星みたいに儚いのかなぁって少し思ったりもしたけど、本当に綺麗だった。数え切れない星屑が夜空を光で埋め尽くしていたから……
ハルメスさんの部屋で……
「悪いな……出来るだけルナの傍にいたかっただろう?」
最後の夜、わたしはハルメスさんと共にいた。明日からの戦いを考えれば、ルナ達が穏やかに過ごせる時間はずっと先になるかもしれない。それをハルメスさんが配慮したからだ。そして……わたしは、今日ルナの傍にいたらきっと泣いてしまうと思ったから……
「……いいえ、いいんです。ハルメスさんだって、皆と会えるのは明日で最後なんですよー……辛くはないんですか?」
わたしは正直、前日になって不安の気持ちが増した。決意は変わらないけど、どうしようもなく不安だった。自分が消えてしまうのが恐いんじゃなくて……ルナの傍にはもう居れないという事を想像出来なかったから。
「……俺も辛いさ。あいつらの幸せな未来を見届けてやれないのがな。そして……君に悲しい思いをさせている事も……でもな、俺は自分の人生には一片の悔いも無い。俺は短いながらも愛する人と共に過ごす事が出来た。そして、これから先は俺の弟達……そして人間達が幸せに歩んで行く事が出来る。それで十分だからな」
わたしも……同じ気持ち。わたしはルナと共に生きてこれて幸せだった。そして、ルナが大好きな……わたしも大好きなシェルフィアと一緒に幸せになってくれる。そう信じてるから。不安は……消えた。
「全ては……『愛する者の為に』」
その為なら何も恐くない。命を失う事も……存在が消えてしまう事も。
だって、わたしは今まで幸せだったし……わたしが愛するルナが幸せになるんだからねー。
〜最後の言葉〜
「さぁ出発だ!」
この日、日の出と共にわたし達は目的を果たす為にフィグリル城を飛び立った。『新生・中界計画』を阻止する為……ルナとシェルフィア、人間達に幸せをもたらす為に。
「行きましょう!」
わたし達はその声に呼応した。わたしとハルメスさんは目を合わせる。強い覚悟の目だった。
「ルナ、頼むぜ!お前は……最高の弟だ!」
「はいっ!ハルメス兄さん、あなたは私に全てを教えてくれました!あなたは師であり、最高の兄です!」