「はいー、わたしも天界のお酒を飲んでいましたから。それにしても、ルナとシェルフィアが心配ですねー」
わたしは、今感じている事を正直に伝えた。わたしは生まれてから今まで、ルナと長期間離れた事がほとんど無い。その所為もあってか、何だか寂しくて心配だった。
「あいつらなら大丈夫だぜ!俺には何となく感じられる。同じエファロードで兄弟だからかもしれないけどな」
ハルメスさんは力強く微笑んで、わたし用の小さなグラスに最高級のワインを注いでくれた。
「そうですかー!それなら安心です」
わたしは何だか安心して、注がれたワインを一気に飲み干した。
「おぉ、いい飲みっぷりじゃないか!さぁ今日は二人で飲み明かそう!」
2、3時間は楽しく会話をしながら次々と酒瓶を空けていった。
「ハ……ハルメスさーん……わたしはそろそろダメですー」
後ろには酒瓶だけでなく……樽が転がっている。わたしはもうこれ以上飲めない。これがエファロードの実力なのだろうか?
「そうか、俺はまだまだ大丈夫だがな。そろそろ……本題に入るとしようか」
さっきまでのハルメスさんとは違い、真剣な目つきになった。まるで、視線で射抜かれそうな程だ。
「……はい、わかりました」
わたしもはっきりと答えた。酔いが急速に醒めていくのを感じる。
「単刀直入に言おう。俺は、この戦いに終止符を打つ為に『間違いなく死ぬ』」
「えっ!」
わたしは思わず叫ぶ!一体どういう事!?
「驚いて当然だな。理由を話そう。人間界の平和、ルナとシェルフィアの幸せを考えた選択をするとそうなるんだ。まず、『新生・中界計画』自体を消す事は出来ない。何故なら、それは『神』の意思であり『獄界』の意思でもある。だが、計画の実行を阻止する事は出来る。その為には……神を説得し、説得に応じない場合は戦う事になるだろう。その役目を俺以外の3人に担ってもらう。……その代わりに、俺が獄界からの侵攻を全て防ぐ。そして……最終的には、『獄界への道』を封印する。輝水晶の遺跡に俺の『命』を捧げる事でな」
そうやって、淡々と話すハルメスさんの表情は強い決意に満ちていた。そして、その目には一点の曇りもなかった。でも!
「そんな事!絶対にルナ達は承知しません!ハルメスさんが命を落とすなんて選択は絶対にダメですよー!」
わたしは彼の目を見据えた。ここでわたしは譲ってはダメなんだ。