壁面に書かれていたのはこの遺跡の構造、エネルギー回路、装置起動に必要なエネルギー値の詳細だけだったからだ。そう、この遺跡自体が装置であり起動には膨大なエネルギーが必要だ。元々は、人間の魂『10000人』分で起動するように設計されている。『魂』というのは、肉体の生命エネルギーを遥かに凌駕する。だから、この装置に捧げられた人間の肉体は愚か魂も単なる『純粋なエネルギー』と化すのだ。
「俺の生命エネルギーの全てを注いでようやく起動する。それでも足りない場合は、俺の魂までエネルギー化されるんだな」
ハルメスは誰もいない空間に向かって呟いた。そして、暫く無言で中空を眺めているのだった。
訪れた3日目……
「あー……もうっ!」
わたしは次々と襲いかかってくる神術人形と戦っていた。倒しても倒しても起き上がってくる。流石はハルメスさんが作った人形。
「キリがないわねー!これでどう!?高等神術『滅炎』!」
灼熱の空間が凝縮し、熱球が現れる!
「ゴォォ!」
神術人形が数体直撃を受け、壁まで弾き飛ばされる!これで少しの間は動けないはず。わたしは、空を切り『安全地帯』まで戻った。ここにいると、神術人形は襲ってこない。暫くは休憩だ。
「ふー……いい汗かいたわー!」
わたしは、汗を拭きESGと水を補給する。まだトレーニングは3日目だが、驚くべき事に高等神術まで使えるようになった。ここまで急激に成長したのは、多分『生命力を上昇させる装置』があったからだ。これは、S.U.Nの光をエネルギーに変換して体内に取り込めるものらしい。
「リバレス君、なかなか調子が良さそうだな」
突然ハルメスさんの声が遠くから響いた。そういえば、今日は約束していた日。もう夜なのー!?
「はいー!お陰様で力がつきました!これで、少しはルナの役に立てそうですー!」
わたしはハルメスさんの下まで飛んでいった。
「そうか、それは良かった。それでは、『話』の為に城に戻ろうか」
彼はそう言って微笑んだ。そして、すぐに『転送』によってフィグリル城に移動した。
「さぁ、リバレス君飲もう!リバレス君も、酒には強いだろ?」
今、わたしとハルメスさんは、屋上の会議場で向かい合わせに二人で座っている。空には、眩いばかりに散りばめられた星々……時々流れ星も見える。雲は一つも無かった。まるで、世界にはわたしとハルメスさんの二人だけが存在して……空がそれを覆っている。そんな雰囲気だった。それは物悲しくもあり、遥かなる時の流れに身を委ねている自分自身の存在が小さく感じられた。