私はそう言って、家の入り口まで見送った。大抵の場合私も一緒に行くのに、今日は何故かお母さん一人で行く事になった。
……私は、どうしてこの時お母さんを止められなかったんだろうって自分自身を責める時がたまにある。何か特別な事がある時は……後から思えば必ず『いつもとは少し違う予兆』のようなものがある気がするからだ。この時は……お母さんが一人で行くって言うのを止めれば良かったのに!
「ただいま」
家を出て4時間程経ってから、お母さんは帰ってきた。酷く顔色が悪く……今にも倒れそうになりながら!
「お母さん!どうしたの!?」
私は、お母さんを抱き締めた!体がとても冷たい!
「フィーネ、果樹園に行ったら急に体調が悪くなったの……この果物は……絶対に食べちゃダメよ」
そう言ってお母さんは意識を失った!
「お母さん!?お母さん!」
私は泣きながらお母さんを揺さぶった!そこへ……
「ただいま……どうした!?」
お父さんが帰ってきた瞬間異変に気付き走り寄る!
「お母さんが!お母さんが!」
私は泣き叫びながらお父さんにしがみつく!
「おい……しっかりしてくれ!……フィーネ!今すぐお医者さんを呼んで来るんだ!」
青褪めた顔でお父さんが私に叫ぶ……
「……うん!すぐに呼んでくるから、お母さんをちゃんと看ていてね!」
私は夜の村に駆け出した!
それから2週間ぐらい経ったある日……
「……あなた……フィーネ、話しておきたい事があるの……聞いてくれる?」
お母さんが倒れてからずっと、私とお父さんは付きっきりで看病を続けていた。今も、お母さんの手を握り締めている。私は、涙が枯れ果てるんじゃないかという程に涙を流し続けた……お母さんの顔も体も……痩せ細り……酷く冷たくて……まるで別人のようになってしまったからだ。村で唯一の医者には、もう治る見込みは無いと言われた。そして……もう長くは生きていられないとも……何より辛いのは、不定期に訪れる強い発作だった。発作が訪れると、お母さんは全身を掻き毟り……苦しさの余り大声で叫ぶからだ。
「……お前……無理して喋ろうとするなよ。必ず治るから……話は元気になった時でいいじゃないか?」