私はそう言って、自分の部屋に駆け戻り小さな包み袋を取ってきた。
「ちゃんと覚えててくれたのね……お母さんは嬉しいわ」
お母さんは、少し目を潤ませながら私からのプレゼントを受け取った。
「お父さんが帰ってきてから開けてね」
こうして、私達が食卓の準備をしていると……
「ただいま!」
そこで、鉱山で今日の仕事を終えたお父さんが帰ってきた。
「お帰りなさい!」
私とお母さんの声が重なる。私はお母さんによく似ている。姿形だけでなく、声も。それは私の誇りなの。
「おいおい、今日はどうしたんだ?二人とも揃って!」
少しびっくりしたような顔。でも、お父さんが今日の事を忘れていない事を私はすぐにわかった。
「もう!お父さんだって気付いてるくせに!その後ろ手に持っている花束は何?」
「ははは!フィーネは鋭いなぁ、さぁお祝いの晩御飯にしよう!」
「沢山御馳走を作ってるわよ!」
私達家族は今日も笑顔が絶えない。……外では魔物が現れたりするけど、私達は幸せだった。幼心に、これが『愛』っていうものなんだと私はずっと思ってきた。
「そうか、フィーネもお父さん達にプレゼントがあるみたいだな!」
お母さんが作った世界で一番美味しい料理を食べながら、お父さんは言った。
「うん!でも、あんまり期待しないでね」
私はほんの少し顔を紅潮させた。
「何かしらね?」
お母さんが、包み袋に入っていた小箱の箱を大事そうにそっと開ける。
「これはいい!」
お父さんは大袈裟に声を上げた。そして、箱の中身をそっと取り出す。
「良かった。喜んでもらえたみたいで」
私はほっと胸を撫で下ろす。箱の中身、それは私の手作りの人形。人形は3体あって……お父さんとお母さんと私のつもりで一生懸命作った。上手く作る事は出来なかったけど、喜んでもらえて本当に良かった。
「フィーネ、ありがとう!大好きよ」
お母さんが私の頭を撫でる。私は素直にニッコリ微笑んだ。
「これは我が家の宝物だな!」
お父さんも嬉しそうに私の頭を撫でた。
こんな日々が続いていく。私はそう確信して疑わなかった。
〜3ヶ月後〜
お父さんとお母さんの結婚記念日から、3ヶ月ぐらい経ったある日の事だった。
「フィーネ、ちょっと果樹園まで果物を分けてもらいに行ってくるわね」
今の季節は、初夏で果物が美味しい時だ。ミルド村の外れにある果樹園は、毎年実りが豊かで味も良く非常に人気がある。お母さんは、その新鮮な果実を買いに行くのだ。
「うん、気をつけて行って来てね!」