とても……とても優しくて穏やかな表情だった。その心に私は今までずっと救われてきたんだ。ルナさんのいない世界なんて考えられない。こんな気持ちを持っていられて、こんな私を愛してくれて……これからも、幸せを育んでいける。そう思うと、私は涙が零れた。
「シェルフィア?どうしたんだ、大丈夫か!?」
心配そうにルナさんが、私を抱き締める。
「ううん……悲しい訳じゃなくて、ルナさんがいてくれる事が嬉しくて。フィーネだった頃の私の両親も、お互いにこんな気持ちで私を生んでくれて、育ててくれたのかな?」
私は涙を拭いて、ルナさんの顔を見上げた。
「……きっとそうだろうな。そうじゃないと、そんな優しくて強い心を持てないよ」
ルナさんが、私の髪を撫でる。私は、不思議とフィーネだった頃……子供の頃を思い出していた。愛し合っている両親が私を育ててくれたから今の私がある。そして、こうしてルナさんを愛する事が出来る。そう思ったからかもしれない。
「お父さんと……お母さんの話をしてもいい?」
私はこの時無性に両親の話を聞いてもらいたくなって、そう訊いた。
「……何時間でも聞くさ。大事なフィーネの両親の話だからね」
ルナさんはそう言って、私達は星と街並みが見えるベンチに座った。
〜203年前、フィーネ14歳〜
「フィーネ、そろそろ勉強は終わりにして晩御飯にしましょう」
お母さんが私の肩を軽く叩いた。その時、私は部屋で本を読みながら勉強をしていた。昔は学校で勉強をしていたけど、学校を魔物に破壊されてから自分の家でしか勉強出来なくなった。私は新しい知識や世界を知る事が出来る学校が好きだったから、今も自分の出来る範囲で本を読んだりしている。でも、今は晩御飯の準備を手伝わないと。
「はぁーい」
私はすぐに立ち上がり、キッチンに向かった。彩り豊かなサラダ、そして肉料理の数々。そして、とっても美味しいスープ……
「ん?どうしたの、フィーネ?」
お母さんが私の顔を覗きこんだ。私が、ずっと料理を見ていたからかな?
「美味しそう!それに、今日の晩御飯は豪華だなって思ったの」
私は思った事をそのまま言葉に表していた。
「そうね、今日はお父さんとお母さんの結婚記念日だからよ。15周年」
お母さんは何よりも嬉しそうに微笑んだ。お父さんとお母さんはずっと仲がいい。そして、二人とも私の事を心の底から大切にしてくれている。物心がついた時から私はそう感じて来た。そして、それは今も変わらない。
「あ、本当だ!今日は記念日ね。おめでとう!」