§番外編§

 

【フィーネの心】

 

「ねぇ、ルナさん」

 フィグリル城の屋上、かつて皇帝やリバレスさんと最後の晩餐を交わした場所で私はルナさんに話しかけた。

「どうした、シェルフィア?」

 物思いに瞬く星空を見上げていたルナさんの瞳に私が映る。私はその瞳が大好きだ。私がフィーネだった頃から変わらない。とても優しい目。特に、笑っている時の顔が一番好き。こんな人が、私なんかを愛してくれるなんて、初めは思わなかった。でも、私は一度死んでしまったのに……『永遠の約束』通り、ルナさんは迎えに来てくれた。こんな人が、今もこうして傍にいてくれるなんて……私は本当に世界一の幸せ者だと思う。ずっと、ずっとこの時が続いて欲しい……それが、例え私のわがままだとしても。

「昔、私が言った事を思い出したの……フィーネの頃にね」

 私は微笑みながら、ルナさんの目を見つめた。きっとルナさんは、何でも覚えている。しかも、何も言わなくても私が考えている事を大体当ててしまう。でも、いくら私の考えが読みやすくても……今回私が思っている事まではわからないだろうな……

「ん?フィーネだった頃に言った言葉……全部覚えているけど何だろう?もしかして、200年前に船で漂流した3日目の夜に『戦いが終われば敬語と、さん付けをやめる』って言ってた事か?」

 残念ながら、今回はルナさんの予想ははずれだった。確かに全ての戦いが終わった後、私はとても苦労してルナさんに対して『敬語』を使わないようになった。今も、『ルナさん』って呼ぶのは変わらないけど。

「うーん、残念……違うの。ルナさんが、私を好きになってくれて……死んでしまったお父さんとお母さんに『辛い事もあったけど、私は幸せです』って言った事」

 その時、私は少し悲しい顔をしていたのかもしれない。ルナさんが優しく肩を抱いてくれた。私は心の底から安心して、ルナさんの胸に頭を預ける。すると……

「勿論覚えてるよ……あの時に約束した通り、今は一緒に暮らしてる。フィーネとしての体は失ってしまったけど、これからも、私はずっと傍にいるよ。だから安心するんだ」

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