ノレッジもジュディアの意見に同調する。
「私はそうは思わないな……確かに、優秀な者だけがいればいいという考えもわからないではない。でも、テストや勉強だけで天使達の価値なんて測れはしないよ。皆に等しく、未来に対する自由があれば……と私は思うんだ」
その後なかなか皆の意見は合わなかったが、皆は昔からの友人。結局は、論争など忘れて楽しく語っていた。
「お!そろそろ時間だぜ!」
時刻は9時30分。余裕を見て、そろそろ帰らなければいけない。私達が帰路に就こうとしたその時だった。
「うわぁぁー……ん!」
小さい子供、いや生まれたばかりの子供の泣き声に似ていた!
「行こう!」
私達は、声の聞こえる茂みの方に走る!
「天翼獣!」
ジュディアが叫ぶ。そう、そこには妖精のような……蝶のような姿をした小さな小さな天翼獣がいた。その傍らには、既に死亡していると思われる親の天翼獣……恐らく、この子供を生む時に死んでしまったのだろう。私も、親の命と引き換えに私が生まれたと聞いている。私達は同じ境遇……そう思うと、この天翼獣に何ともいいようの無い程の共感が生まれたのだった。
「うわぁぁー……ん!」
さっきよりも泣き声が弱々しい……私は無言でその子供の天翼獣を掌に抱いた。
「ルナ!?どうする気なの!?親のいない天翼獣には、天使は関与してはいけないのよ!」
ジュディアが叫ぶ。しかし、私は答えた。
「連れて帰る。生まれた時から親のいない悲しみがわかるか?この子は、私と同じ独りぼっちで生まれてきたんだ!」
すると、皆は目を伏せた。皆には家族がある。私の事はわかってくれていても、この悲しみはわからないだろう。
「でも、ルナリート君!法律で、天翼獣と暮らす際には『天翼獣が50歳以上で、尚且つ言語能力を持ち天使の生活に適合出来る事が絶対条件』なんですよ!神官ハーツ様に厳しく罰せられます!」
ノレッジは叫んだ。勿論知っている、その法律を……
「でもな!この子は、一人では生きていけない!ここで見捨てたら死んでしまう!」
私はどうしても、この子を見捨てる事など出来なかった。生まれた瞬間から否定される存在など悲し過ぎる!
「ルナ!お前の言いたい事はよくわかったぜ……それなら、明日無理を承知の上で神官に頼んでみろよ。お前の成績なら、あの神官も許してくれるかもしれないぜ」
的を射た意見だ。セルファスは人情家だが、こういう時には的確な事を考えつく能力を持っている。