「ルナー!学校に行くわよ!」
ほとんど寸分の狂い無く彼女は迎えに来た。私も既に準備は出来ている。
「わかった!今行くよ」
この日も、602年間変わらない退屈な授業だった。私は、入学してから常にトップの成績を保ち続けている。それは、私が物事を覚えようとすれば一度で覚えられる事もあったが、何よりもハルメスさんがいなくった後私がこの天界を変える事を決意したからだ。この天界を変えるには、最高の成績を修めて神官となる事が最短の道だと思っている。
午後8時、授業の終わりと共に少しばかりの自由な時が訪れた。10時までに部屋に戻ればいい。私とジュディア、セルファスとノレッジは噴水前に集合した。
「さて、今日はどうする!?」
相変わらず元気なセルファスが皆に問いかける。短い自由時間だ、出来る事は限られているが少しでも羽を伸ばしたい。皆そう思っている。
「そうだな、久々に森に行くのはどうだ?」
私はそう言った。森は心が和む。自然は、束縛された私達の心とは無関係にいつも悠然と生きているからだ。
「私はその意見に賛成よ」
「僕も、それでいいですよ」
ジュディアとノレッジは同時に答えた。昔から、私達は森でよく遊んでいた。かくれんぼをしたり、神術比べをしたり……
「よし!じゃあ、森に向けて出発!」
セルファスの掛け声と共に私達は翼を開く。空を飛べる貴重な時間、私を含め皆この瞬間が大好きだ。束の間の自由を噛み締めながら、数分後に森に到着した。
そこで、まずは神術比べをした。この時点で私とジュディアは高等神術をかなり使いこなせていた。ノレッジもそれに続き、最近になって高等神術を使えるようになってきていたが、セルファスはまだまだ中級神術も完全には使えなかった。だが、セルファスの『雷系』の中級神術だけは高等神術に並ぶ程だった。
私が得意なのは、威力の高い炎の神術。ジュディアは、微細なコントロールの出来る氷の神術。ノレッジは拘束系、セルファスは雷系というように皆それぞれに得意分野が出来つつあった。神術比べの後、私達4人は空を見上げていた。
「空は自由でいいな」
私が呟く。
「そうだな、俺もテストさえ無かったら毎日が楽なのにな!」
セルファスが頭を抱える。相変わらず大袈裟な奴だ。
「私は、天界にもっと優秀な天使が多ければ皆幸せになれると思うわ」
ジュディアは視線を空から、私に向けてそう言った。セルファスは、ドキッとしたようにジュディアの方を向く。
「僕も優秀な者だけがこの天界にいれば、皆の悩みも軽減されるような気がしますね」