リバレスが不安気に囁いた。確かに、今の俺の力はさっきまでに比べて激減している。さっきまでが、第3段階だったのに今は第1段階の力に戻ったからだろう。もうすぐ、獄王に会うかもしれないのにこのままではまずいな……
「エファロード!俺を無視するとはいい度胸だ!」
そんな事を考えていると、牢の番兵が俺に罵声を浴びせてきた。こんな奴はどうでもいいが……
「バキバキバキッ!」
俺は、とりあえず鉄格子の3本を軽くへし折って牢の外に出る。この程度の強度しかない牢ならば、紙箱の脆さに等しい。
「誰が、拷問の末に処刑されるんだ?」
立ち竦む番兵を睨みつけて俺は問いかける。すると、番兵は必死の形相で逃げ出した!
「貴様は……獄王様に殺されるんだぁぁ!」
俺は、番兵が逃げていった階段をゆっくりと歩いていった。恐らく、獄王に会うのは力づくでしかないだろう。
剣も無く力も少ない今の俺でどこまでやれるかどうか心配だが、もうすぐフィーネに辿り付けるはずだ!
俺は、上に通じる扉をゆっくりと開いた。すると……
「よく来たな……ルナリート・ジ・エファロードよ……
我こそは獄王……フェアロット・ジ・エファサタンだ……
我は、この宮殿の屋上にいる。申したい事があるのならば、
己が力で辿りついてみせよ!
お前が正しいというのならば……力で示してみるがいい」
荘厳な声が響いた。重く……力を感じる声……俺はその声が獄王本人であることを確信した。
声だけで感じる力……それは、神にも引けをとらない。恐ろしい力だ……
「……わかりました。俺は、必ずあなたの元に辿りついてみせましょう!」
神にも等しき、獄界の王……俺の口からは自然と敬意の言葉が出てきた。
このフロアは……一辺が100mはある大広間。上に続く階段は見当たらない。唯、奥に扉が一つだけ見えた。
「ハッハッハ!そんな言葉は、ワシを倒してから言うがいい!」
その言葉の先を追うと、獄王の側近……ファングがいつの間にか扉の前に立っている。またも気配すら感じなかった!
「どうした!?エファロードよ、あの時より格段に力が落ちているではないか!?ワシの生命力は800万……今の貴様は、25万如きしかないぞ!……まぁいい、ここで死ぬがいい!」