エファロードを憎む声……魔だろうか?いや……もしかすると……
「お前は誰なんだ!?」
俺は必死の思いで立ち上がり、海の方に向かって叫んだ!
「貴様らの戦いの所為でェェェェェ……犠牲にぃぃィィ」
貴様ら?犠牲?どうやら、俺の声はほとんど届いていない。だが、思い当たる事は二つある。
一つは、俺が人間界で殺した魔の怨みの念……そしてもう一つが……
「世界がぁぁ……血に染まりィィ……
割れてしまうゥゥ」
俺は激しい頭痛の中で、この声の正体を理解した。この声は、20億年前の大戦の際に犠牲になった者の叫び……血に染まる世界……そして、割れる世界……それは全て20億年前の事実だからだ。
だが、なぜ俺に叫ぶ?エファロードに?
そう考えていると、いつの間にか声は消えていった。
「ルナー!?どうしたのー……大丈夫?」
気付くとリバレスが元の姿に戻り、涙を浮かべて俺の顔を覗きこんでいた。
「あぁ……あの海から、亡者の無念の叫びが聞こえてきただけだ」
俺は、少しやつれた顔をしてリバレスに返答した。
「亡者!?わたしには、何も聞こえなかったけど、本当に大丈夫なのー!?」
彼女は余計に心配そうな表情をする。
「大丈夫だ。この海を越えれば……獄王の所に辿り付ける気がする。行こう!」
本当にそんな気がした。まるで、俺はこの風景をかつて見た事があるかのように……
この場所は、眼下に海が広がる断崖……そして、砂漠の果て……記憶の中にそんな光景が確かにあるのだ。しかし、俺は余計な考えを捨ててリバレスと共に大海原に飛び立った。ドロドロとした、光の一閃すら通さない暗黒の海……俺は、一刻も早くこの海を越えたかった。天界での話の通り、この海には死者の魂や念が沈んでいる。転生すら出来ない不浄の魂が……
断崖を飛び立って、また1日が過ぎた……獄界での時間の経過は、時計でしか知る事が出来ない。何故なら、S.U.N(太陽)の光などは無くて……獄界を包む無限の溶岩が、獄界の空を照らしているだけだからだ。時間が経過しても、景色が変わることは無い。
「ついに来たか」