「(何も見えないわねー!)」
彼女の言うとおり、先は見えなかった。唯、熱砂の砂漠の遥か……遥か向こうの空が段々暗くなっているのが見えただけだった。
「恐らく、ここは獄界の最果て……あの暗闇の中心が獄界の本拠地だろう」
俺はそう直感し、その方角に飛んでいく事にした。俺がこの姿になって、飛べるようになった事はフィーネを早く見つける為には幸いだった。
「(そうかもねー、急ぎましょー!)」
リバレスの声よりも早く、俺は全速力で赤い空を切って飛んでいた。
俺は急いだ……渾身の力で翼を震わせて……しかし、1時間……3時間……6時間経っても一向に風景は変わらなかった。
「(後ろに溶岩の海は見えなくなったけど、見えるのは砂漠と岩山だけねー)」
俺の心を察知したのだろう。リバレスがそう声をかける。
「仕方ないさ……俺達は誰も入ったことの無い世界にいるんだ。出来る事は、前に進む事だけだ」
俺も正直不安だったが、今よりも前に前に進む事で心の迷いを振り切った。こうしていく事がフィーネに近付く事なんだ!
無情にも時間は過ぎ去る。12時間、24時間……そして、空を飛び始めて2日が過ぎた。
「あーっ!」
急にリバレスが叫ぶ!それもそのはずだ……砂漠が途切れて、何よりも深く暗い闇……漆黒の海が現れたからだ!
「うっ」
それが目前まで迫った瞬間、俺は砂漠へと落ちた……とてつもない、『何か』に全身を捕われたからだ!
「(ルナー!どうしたのー!?)」
赤砂の上で身動きすら出来ない俺に、リバレスは心配そうに問いかけた……
「はぁ……はぁ……あの海は危険だ」
俺は咄嗟に感じたことを呟く……
「エファロードォォ」
その時、頭が割れそうな呪いの声が脳裏に響いた!
「うわぁぁ!」
俺は頭を押さえて転げまわる!
「どうしたのよー!?何があったのー!」
リバレスが叫ぶ!どうやら……この声は彼女には届いていないらしい。
「呪ってやるぅぅぅ……恨んでやるぅぅぅ……
許さないィィ」
未だに声は響く!一体……何の声なんだ。この世の者とは思えない憎しみに満ちた怨みの声……