魔に背を向ける俺に危険を感じたのだろう。リバレスは、そう問いかける。
「ああ……愛する者を奪われる痛みは、俺もよく知っている。その痛みは、復讐なんかでは癒されない。命を賭して、愛する者を取り戻すしかないんだ。例え、生まれ変わって記憶が消えようとも愛した心は消えはしないからな」
俺は、魔にも聞こえるように話した。これでもまだ、背を向けた俺を襲ってくるならば倒すしかない。
「……お前の言いたい事はわかった。だが、お前は魔にとって災いでしかないんだ!お前が、愛する人間を救う為に魔を殺すのを善とするならば、私は死ぬまでお前と戦うしかないんだ!」
魔が力を振り絞って、炎を作りだす。この女の力で俺を倒す事は出来ない。それはわかっているはずなのに!
「俺は、自分を完全な善だとは思っていない。唯……俺は、自分の心を信じて……愛する人を信じて道を歩むだけなんだ。その為に俺は戦う……例え、何者が俺の前に立ち塞がろうとも。……俺は、お前を殺したくない。出来ることならば……彼の魂を見つけ出して……幸せになってくれ」
俺の進むべき道……それに一番大切なのはフィーネだ。フィーネを取り戻して、幸せになる為なら何だって出来る。
魔は……憎むべき存在だと思っていたが、俺はこのソフィという魔に会って少し考えが変わった。魔も愛するという心を持っている事……フィーネの為に……人間の為に『魔を滅ぼす』のは正しい道ではない。そんな気がした。戦いの先に見えるのは何なんだろうか?
「……お前の愛する人間の魂は……獄王様が保管している。早くここから消えて!」
ソフィは、そう叫び炎を放ちながら俺を階段へ追いやった。これで、彼女を殺さずに済む。俺は階段を駆け下りた。
「うわぁぁ!」
すると、階段の上から大泣きの声が響いた。彼女の愛も深かったのだろう。俺は心が痛んだ。
「(ルナー、大丈夫ー?)」
再び走り出した俺に、リバレスは心配そうに言った。
「あぁ。フィーネの魂は獄王が持っているらしいからな……何があっても、獄王に会いに行く!」
フィーネの居場所がわかった!だが、獄界の支配者に会いに行く事は危険この上無いだろう。神と同等の力を持つ王、それが恐ろしいのは事実だが、フィーネの事を考えると恐怖は薄らぐ……