と、フィーネは恥ずかしそうな顔をした。
「フィーネは見た目と違ってドジねー」
そこに、リバレスの一言が入った。人の事を言えるのか?そして、フィーネは朝食を慌てて作り直そうとする。
「フィーネ、このままでいいよ。十分に美味しいから」
と言って、私は辛いパンと甘いスープを一気に食べたのだった。
「ルナさん、優しいんですね」
と、何故か目に涙を溜めたフィーネがそう言った。
「どうしたんだ!?悲しいのか?」
私は驚いて思わず訊いてしまった。
「……いいえ、嬉しいんです。私……ルナさんだけは、信じていけそうです」
頬を朱に染めて、本当に嬉しそうにフィーネは食器を片付け始めた。
「(私が何かしたのか?)」
私は思わずリバレスに訊いてしまう。
「(相変わらず鈍いわねー……女心がわからないんだからー)」
と、リバレスはフィーネの方に飛んで行ってしまった。
「人の心はどれだけ勉強しても、わからない事が多いな」
と、私は一人で呟いていた。
〜出航〜
朝食も終わり、私達は村を出発する事にした。
「次は何処へ向かうんだ?」
私はいつも通り、地図を広げるフィーネに問い掛けた。
「それが」
何故か、フィーネの表情は曇っている。
「どーしたのー?」
その様子を察してか、リバレスが気遣うように訊いた。
「はい、この村の人達はみんないなくなってしまったので、他の土地へ行く手段が無いんですよ」
なるほど、地図を見ればわかる。このルトネックの村は孤島で、交通手段が船しか無いのだ。となると……
「それなら、レニーの街からの使者を待つか『リウォルの街』へ進むしか無いんだろ?」
私は地図を見てそう訊いた。ここから一番近いのは、東の海に浮かぶ不気味な火山跡で『死者の口』と呼ばれている島らしいが……
「そうですね。でも、きっと、レニーからは誰も来ないですよ。私達を送ってくれたおじさんは……魔物に襲われましたから」
となると、私達の道は南西およそ500kmにある『リウォルの街』しかないな。
「それなら、リウォルの街へ行こう。船着場には船が数隻あったしな。一隻ぐらい拝借しても構わないだろう」
私がそう言うと、フィーネは微笑んだ。私が率先して先へ進もうとするのが嬉しいのか、進む道が決まった事が嬉しいのかはわからないが。
「行き先は『リウォルの街』で決定だけどー、『死者の口』ってなーにー?」