「馬鹿が!お前が一番憎んでいる相手をどうして信じる!?私が来るのがもう少し遅かったら死んでいたんだぞ!」
私は、彼女への心配が怒りになって現れたのだった。
「ごめんなさい……でも、私一人の命でたくさんの人が幸せになるんだって思うと」
フィーネは申し訳なさそうに、俯きながら涙を溜めて返答した。
「考えが浅過ぎるんだ!あの魔物もせいぜい中級程度の者だろう。おそらく、この世界には他にもっと強力な魔物がいる。そして、 魔物は人間そのものを滅ぼそうとしているんだ。(それは、神が何らかの理由で中界を人間界に変えたせいなのだが)そんな奴等がたった一人の人間の娘の言葉に耳を貸すはずがないだろう?わかったら、これからは軽率な行動を控えるんだ!」
私は感情に任せて、人間が知らない事まで言ってしまいそうになった。
「……わかりました。でも、どうしてそんな事を知っているんですか?」
と、フィーネは私が隠している事や知っている事を知りたそうだ。
「訊かない約束でしょー?」
と、リバレスはいいタイミングで横槍を入れた。
「……はい、でも、もし教えてくれる気になったらお願いします!私は何でもしますので!」
と、またフィーネは私の手を握りお願いしてきた。
「それと……助けてくれてありがとうございます!」
感謝の言葉と笑顔も忘れていなかった。
「あぁ……気が向いたら少しぐらいは話してもいいかもな」
フィーネという人間に、少しずつ心を許していく心を私は感じていた。
なぜ、この娘は自分よりも人の幸せの事を考えられるんだ?人間も、私達と同じように考えを持ち幸せを追求する生物だという事が最近わかってきた。いや、フィーネに限っては私の想像を超えるかもしれないな……
そんな事を考えながら、私達はレニーの街への帰路についた。途中の道の霧は全て晴れて、眩いばかりの光が森を照らしていた。
森の出口が見えた時、既に日は傾いていた。人間界の一日は過ぎるのが何と早い事か……
私は、過ごす一日一日が新鮮で、新しい発見に満ち溢れている事が楽しかった。
そして、これが本当の意味での自由なんだと実感していた。