「……それより……お父さん!お父さん!」
私は、フィーネが突然現れたので頭が困惑していた。そうだ……彼女にとっては私達の正体よりも、親の安否が大切に決まってる。私は約束を守れなかったのだ!彼女は、父の亡骸へと駆け寄っていった。
「お父さん?お父さぁぁ……ん!」
彼女は声の限りに泣き叫んだ。生きているはずも無い父の骸に抱きつき、顔をうずめながら泣いている。私は心が痛んだ。
「……すまない。手遅れだったんだ」
私とリバレスはかける言葉も見つからないのでその場から少し離れた。
「どうするのー?ルナ」
なお、フィーネの泣き声が聞こえる中、リバレスは私に首をかしげて困惑した表情で問いかけた。
「……せめて私達に出来ることは、この危険な鉱山から出るまで見届けることぐらいだな」
私は、その他にフィーネのために出来ることは無いと思った。
「そうねー……あんまり深入りするのも良くないし、どっかに隠れて様子を見守りましょー。それで、あの子がこの鉱山から出たら私達はもう人間とは無関係ねー」
「そうだな。天使の私が、人間のために動くのはこれで最後だ。行こう」
私は、まだ心が痛んではいたが、私は『天使』。人間とは関係ない。この鉱山に現れた魔は倒したんだ。これ以上助ける義理はない。
そして、私達はフィーネに背を向けて歩き出した。
「……待ってください!何処へ行くつもりなんですか!?」
すると、突然涙声のフィーネが私達を呼び止め、私達は振り返った。
「……私達は私達で安住できそうな場所を探しに行く。君には感謝してるよ……だが、さっきの出来事は忘れてもう私達に関わるな。そうしなければ、私は君を……殺さなければならない」
事実だった。私達の存在を公にされれば、天界や獄界の存在すら知らない人間に、私達天界の住人を知られる事となる。もっとも、それは天界の法でも厳しく制限されているし、何より魔にも恰好の標的にされてしまう。
「……いいえ……私……だけでなく、全ての人達にとってあなた達の力は必要なんです!魔物と戦えるのはあなた達しか!」
彼女は、殺されるという一言に全く動じず……むしろ、涙を手で拭い強い意志を込めた目で私達に叫んだ。さっき、家で私に料理を出してくれた時の目とはまるで別人だ……