「……生憎……堕天はしているが、平然と生命を奪う……お前のような下等な者と話す口は持ち合わせていないんだ。早々に獄界へ帰れ!」
私は、柄にも無く感情的になって叫んだ!人間の為などではない。生命の自由を奪う事を許せない私自身の怒りがそう叫ばせたのだ!
「……堕天使の分際で……死ね!」
その咆哮と共に、奴の口から炎が吹き出た!真っ直ぐに私に向かってくる!しかし私は、剣を持たない左手を前に突き出し中級神術である『天導炎』を放った!炎と炎がぶつかる!
「ゴォォ!」
激しい熱が発生したが、私の炎が圧倒的だった!この炎の威力から、奴の力が低級である事は明快だ。堕天はしていても、天使である私は低級魔如きには負けない!私の炎が魔を包んだ!
「ギャアァァ!」
もがき苦しむ魔の絶叫がこだまする!
……その絶叫が終わった時、私は我に返った。
「……私は、魔を殺してしまったか」
私が呆然としていると、リバレスがすぐに飛んできて話しかけた。
「ルナー!大丈夫ー!?」
「ああ……大丈夫だ。それより、私は魔を殺した上に約束も守れなかった」
私は、生まれて初めて魔とはいえ生命を奪った事……そして、人間とはいえ約束を守れなかったことに多少の自責の念を感じていた。
「仕方ないわよー!ルナが戦わなきゃ、ルナが殺されてたかもしれないしー!それに、約束もどうしようもなかったわよー!」
彼女は、私を心配そうに慰めた。だがその時!私は背後……ここにやって来た道の方に気配を感じた!
「……化け物……ルナさん、あなたも魔物なんですか!?魔法を使うなんて!それに、妖精?」
聞き覚えのある声がした。そこには、血の気が引いて恐怖に凝り固まった表情のフィーネが呆然と立っていたのだった!人間に私達の事を知られるのはまずい……だが、見られた以上は説明して口止めしなければ!
「……見てしまったんだな!……だが、私は化け物でも『魔』でもない。と同時に人間でもない」
「わたしも、妖精なんかじゃないわよーだ!」
魔や妖精扱いされるのは嫌だ。しかし、天使である事を明かすわけにもいかない。しかし、フィーネは私達の言葉など上の空だった。