「急ごう、フィーネの父親だけは助けると約束したからな!まだ生きているかもしれない!」
私は、人間を救う気など毛頭無いがこの状況だけは許せなかった。せめて、私を助けたフィーネの父親は連れて帰らなければ!
今まで、フィーネに似た男は一人もいなかったので生きている望みを持って足早に奥へと進んだ。
そして、最深部……鉱石を採掘する現場に到着したのだった。いや、それが遠目に見えただけだ。距離にして残り100m程はある。しかし、そこには目を覆いたくなるような凄惨な場面が繰り広げられていた。
「ヒャハハハハハハハ!死ね!ゴミ人間どもが!貴様らの存在は邪魔なんだよ!」
獄界から現れし『魔』……その姿は異様で、黒褐色の皮膚……天使とも人間とも違う、不気味な姿だった。背丈は2mを超え、五肢には分かれているが、全て厚い筋肉に覆われている。また、長い尾がありそれも強力にしなっている。何より特筆すべきは、頭部……白濁の瞳、鋭く長い牙、窪んだ鼻と似つかわしきもの、尖った耳……その『魔』が、人間を紙屑のように切り裂き……噛み砕き……何らかの術で、激しい炎を発生させている。そして、続けて瞬く間に一人の男に飛び掛った!
「フィーネー!」
それが、その男の断末魔だった。男は魔の腕から伸びる長い爪に胸部を貫かれたのだ。そう……手遅れだった!
「……すまない、フィーネ、君の父親は救えなかった」
私とリバレスは、その地獄へと駆け寄っていたが間に合わず……無残にも、この鉱山にいた人間は全滅したのだ。
「お!また人間か!殺してやるぜ!楽しくてたまらねーよ!」
魔は、私達を発見した。しかし、私の心は憎しみに満たされ戦う事に躊躇いは無かった。
「獄界の住人は、こんな愚物ばかりか!?リバレス、少し離れてろ!」
私は、リバレスに叫んだ。魔はこちらに猛スピードで向かってくる!
「わかったー!」
その言葉と同時にリバレスは、私の側から瞬時に飛び去った。その直後、魔の牙が私へと襲いかかる!
「キンッ!」
私はその瞬間にオリハルコンの剣で牙を打ち砕いた!魔は、不意を突かれ驚愕の表情で私から飛び退く!
「グッ!貴様……人間じゃないな!……まさか天使か!?」
魔は醜い口から緑色の血を流し、私に罵声を浴びせた。