俺は、窓際を離れて、ベッドに戻った。そして、疲れたのかぐっすり眠っているリバレスの頭を優しく撫でる。
「リバレス、ありがとうな。明日からもっと辛いけど、俺はお前を守るから……お前も俺を助けてくれよ。頼りにしてるぞ」
そう言うと、リバレスは眠りながら笑顔を見せた。俺には守る物が多いな……そう思うと、照れくさかったが心強かった。
今日はもう休もう……俺は、人間界に堕ちてからの日々を思い返して眠りの世界へと吸い込まれていった。
〜光を求めて〜
「コンコンコン」
まだ日も昇らない早朝、ハルメスさんがドアをノックする音が響いた。既に、俺達は準備が出来ている。
ハルメスさんに連れられて、俺達は屋上に集まる。そう、フィーネが凍えながら俺を待っていたあの屋上だ……
「ルナ、どうかしたのか?」
ハルメスさんは、俺の表情を読み取ってそう訊いてきた。
「いえ……ただ、早く助けてあげたいと思ったんです」
正直、俺はあの時の事を思い出して悲しみが込み上げていたのだが、そんな弱音は言えない。今は、前に進む事が大事なんだ。
「そうか……わかった」
ハルメスさんは力強く頷く。まず、リバレスが俺の指輪に変化した後にハルメスさんの翼によって『獄界への道』まで送ってもらうのだ。
「ルナ、出発する前に一つ伝えておく事がある」
そう言って、ハルメスさんは真剣な面持ちをした。
「……はい、何ですか?」
俺は、その様子に少し緊張しながら答えた。
「天使の指輪についてだ。天使の指輪は、天使である証であると同時に、持つ者に対して力を与えているんだ。だから、人間が天使の指輪を付けると、天使と同等の力を得られる。そして、逆に指輪を外した天使は力を失っていくんだ。ESGを摂り続ければ別だがな。これは、一般の天使の話……俺とお前、つまりはエファロード……俺達は、生まれた時から天使以上の力を持っている。そんな俺達が、指輪をつけるとどうなるか?力を与えるはずの指輪に力を奪われるんだ。要は、俺達の力は天使の指輪によって制御されているという事だ」
そうだったんだ。指輪にそんな役割があるのは知らなかった。俺が驚いているのを余所に、彼は話を進める。
「俺が何を言いたいのか?お前が、フィーネさん、そしてリバレス君を守る最後の手段……それは、指輪を捨てる事だ。天使としての自分を捨てる覚悟があるなら、お前は制御されないエファロードの力を発揮出来るはずだ。だが……忘れるな。二度と『天使』には戻れない。天界に住む事も出来ない」