ハルメスさんはそれで指輪を外したんだ。ティファニィさんを守る為に……本当に、貴方は俺の人生の師だと思う……
「……わかりました。もし、俺が指輪を捨てるような事があったら……人間界ではお世話になりますね」
俺は、二人を守る為ならば天使としての自分など惜しくは無い。
「よし、任せろ!でも、それは最後の手段だからな!……そろそろ行こうか!」
彼は意識を集中して、光の翼を開いた。光で編まれた美しい翼が……これが、制御されない力なんだ。
「準備はオッケーでーす!」
リバレスの掛け声と共に、俺達は天高く
舞い上がった。
神殿や街が遥か下に見える。遠くに見える山々から
朝陽が顔を出してきた。
その光は山々を照らし、街を照らし……やがては
海を朱に染めた。
こんな光景を次に見られるのはいつだろう。
君と二人で雪の降る丘で会えるのは……
真冬の空は……人間じゃない俺達にも凍える程寒かった。
でも、君はもっと冷たい思いをしてるよな……
人間界に来てからの時間……短かったけど、俺の一生の
半分以上の出来事があったような気がするな……
永遠の心……そして、愛する心……
まさか、知る事になるなんて……
天界では、自由を求めるだけだった。
それを皆に与えるのが使命だと思ってた……
でも、今は違う……自由よりも何よりも……
フィーネに会いたいんだ。
俺は戦うよ……命も魂もかけて、君を取り戻す……
幸せになる為に……
大海原をハルメスさんは、高速で飛んでくれて丁度正午頃に目的地が見えた。海の真ん中に突き刺さるような、高い岩山に囲まれた島……あれが、『獄界への道』……通称死者の口か……植物は一本も生えておらず、大地は暗黒に染まり……光さえも反射しない。恐らく……獄界からの、闇のエネルギーが漏れている所為だろう。天界と人間界は、S.U.Nの光に支えられている光の世界……
だが、世界が3つに分かれた時から獄界は『暗黒の海』の中に存在している。天使が踏み込んだ事の無い世界だ……
「……リバレス、行くぞ!」