深呼吸して、俺は彼に応えた。リバレスも元の姿に戻る。
「……獄界!?流石にそれは無謀だぞ!」
俺の言葉に、ハルメスさんは驚愕の表情を見せた。そこまでは予想していなかったのだろう。
「構いません。無謀でも。もし……あなたの恋人の、ティファニィさんの魂が獄界にあるとしたらどうしますか?」
俺は真剣な目をしてハルメスさんに問い返した。答はわかっていたが……
「……無論、命をかけて取り戻しに行くさ。そうだな。俺もそんな事があったんだ。ティファニィが『魔』に殺されかけた時が……俺はその時……『天使の指輪』の力を使って、あいつを蘇らせた。指輪は、一度外すと二度と天使には戻れないんだ。無論、天界にも戻れない。あいつを救う為なら、天使としての自分なんてどうでも良かったよ……命さえ惜しくなかった。……本当にお前は、余計な事まで真似してくれるな」
そう言ったと思うと、間髪を入れずに彼は続ける。
「人間界は俺が守るから……行ってこい、獄界に!」
過去の真実を語り、ハルメスさんは俺の肩を強く叩いた。勇気と力が溢れてくるのを感じる!
「はいっ!……あと、一つ聞いてもいいですか?」
俺は、力強く返事した後にどうしても一つだけ質問したい事があった。
「……ルナー、あんまり昔の事を訊いたら失礼よー!」
そこで、リバレスが俺を制止する。きっと、俺がハルメスさんの心の傷を掘り返すと思っての事だろう。
「構わないぜ。何でも聞いてくれ!」
予想に反して、ハルメスさんは強気に笑いながら答えた。やはり、この人の広さにはまだまだ及ばないな……
「ハルメスさんは……『永遠の心』は転生しても消えないと思いますか?」
これが聞きたかったんだ。この答が……例え気休めでも、肯定の言葉を。
「……ああ、勿論だ。現に……ティファニィの心は俺の中にある。信じていれば、叶わない事などないさ」
言葉の意味は深かったが、俺はそれ以上聞かない事にした。だが、信じる心が更に強さを増したのは確かだ。
「あのー……ところで獄界に行く方法は?」
そこで、リバレスが本題を切り出す。そうだ、その手段が無いと始まらない。
「それは、たった一つの方法しかない。獄界への道……死者の口を通る事だ。全ての魔は、そこを通って人間界に現れる」