俺が……フィーネの魂を開放出来たら……代わりに俺が命を失うかもしれない。いや、その可能性の方が高い……
それでも、俺は恐れない。もし、そうなってもフィーネが俺を見つけてくれるから!
たった一つの方法……それは俺自身が『獄界へ乗り込む事』……
天界と敵対する獄界……会う者は全て敵……たった一人の天使がそこで何を出来るかなんてわからない。
普通に考えたら……殺されるに決まってる。いや、魂の破片すら残らないかもしれない。
でも俺は、フィーネの為なら何でも出来る自信があるんだ。
迎えに行くよ……獄界に!
〜新たな目覚め〜
眩しい……俺は、強い光が瞼の向こうから射しこんで来る所為で目を覚ました。
「ルナー、半日以上眠ってたわよー」
目覚めた俺の目の前には、心配そうに顔を曇らせたリバレスがいた。そして……フィーネの体が眠る地には、大理石の墓が出来ていた。
「……リバレス、これはお前が作ってくれたんだな?」
俺がリバレスに訊くと、彼女は黙って頷いた。俺にあれ以上の悲しみを与えないようにしたんだ。
「……リバレス、すまない」
俺は、リバレスの頭をそっと撫でた……そして、俺はフィーネの墓碑を見つめていた。
「……ルナー、これから、どうするのー?」
遠い目をする俺に、リバレスは不安げに尋ねる。しかし、この時俺の行くべき道は決まっていた。
「……俺は、獄界へ行く。獄界に乗り込んで、フィーネの魂を解放させるんだ」
俺は、夢の中で決めた意志を伝えた。すると……
「な!?獄界って!いくら何でも、危険過ぎるわよー!『魔』の支配する世界よー!ルナが強いからって……絶対に殺されるわよー!」
リバレスは、顔を真っ赤にして叫んだ。当然の反応だ……もしも逆に、魔が天界に単身で乗り込んできたなら間違いなく始末される。本当に強い力を持つ者は、獄界にいくらでもいるだろう。リウォルタワーに現れた、シェイドのような力を持つ者……そして、それを操る『神』と同等とされる『獄王』……そんな強者から、『魂』を取り戻さなければならない今の俺の力……髪は銀色で目は真紅のままだが……光の翼は失われていた。この力では……シェイドレベルの魔が精一杯だ。でも、俺は、フィーネの為なら何でも出来る!