フィーネは中空を見ていた。焦点が合っていない。
手も冷たい……体も!
俺が誰よりも愛する女性は……救えない!……俺の目から、涙が止め処なく溢れ出てきた。
「……ウソだ……ウソだぁぁ!俺には……
俺にはフィーネさえいればいい!俺はわかったんだ!
天界も……人間界も……天使も何も必要無い!
……唯、君だけが俺には必要なんだ!ずっと……
ずっと……一緒に生きて行こうって約束したじゃないか!
……お願いだ……いつものように微笑んでくれよ!」
俺は、動かないフィーネの体を抱き起こして……強く……強く抱き締めた!戻ってくれる事を願って!
「……ふふ……ルナさん、笑ってくださいよ……私は、あなたが笑ってくれる時の……優しい目が大好きなんです。あの日……初めてルナさんと出会った時から……私は助けられっぱなしでしたね……ルナさんは……とても……とても……優しかった。私は、ルナさんからいっぱいの事をもらったんですよ。ルナさんといた時間……幸せだった。だから……私の人生は決して不幸だったとは思いません。短くても……大好きなルナさんと愛し合えたから」
フィーネは、今にも消えそうな声で……だが、強い意志で懸命に口を動かす!そして……瞳を閉じて微笑んだ。体が更に冷たくなっていく……まるで……決して溶けない氷の人形を抱いているかのように……
「……そんな事はいいんだ!救われたのも……たくさんの事をもらったのも俺の方なんだ!……フィーネが……フィーネが俺の心を暖めてくれたんだよ!一生懸命生きる事も……人を愛する喜びも……全部君が教えてくれたんだ!フィーネがいたから……俺の人生は価値のある物に変わった。なのに……なのに!」
俺は、目の前が涙で曇って何も見えなかった。何よりも
大切で……守りたかった物が……無情に崩れていく……
「……ルナさん、きっと……私の為に涙を流してくれてるんですね。私も……あなたと過ごした事……考えたら……やっぱり泣けてきますよ……もっと一緒に生きて……今まで以上の幸せがあったんじゃないかって……戦いも終わって……一緒に暮らして……ルナさんの子供を生んで……でも、それは叶わない事……贅沢過ぎる夢」