「兄ちゃん!?どうしたの!」
僕は、青褪めた顔をしているハルメス兄ちゃんに泣きついた。
「ルナ!最後にお前に会えて良かった。俺はいなくなるんだ。多分……帰ってこれない」
兄ちゃんは意味深な言葉を言った。でもそれが悲しい事なのはわかる。
「ハルメス兄ちゃん!何処にも行かないでよ!僕には兄ちゃんが必要なんだ!お願いだよぉぉ!」
僕は、必死で兄ちゃんに抱きついた。すると、兄ちゃんは僕の頭を撫でる。
「よく聞け……ルナ。俺は明日からもういない。でも、俺はちっとも悲しくない。それはルナ、お前がいるからだ。お前が大人になって……この世界を変えてくれるって俺は信じてる」
兄ちゃんは、泣き続ける僕を慰めようと、ポケットからある物を取り出した。
「ルナ、これは、俺の宝物だけどお前にやる。だから泣くな!」
そう言って僕にくれたのは、『銀の懐中時計』だった。でも、僕はそれよりも兄ちゃんが大事なんだ!
「やだよ!時計は要らないから!兄ちゃん!兄ちゃん!?」
ハルメス兄ちゃんは、僕の制止を振り切って部屋の中に入った!兄ちゃんの目には涙が溢れてた……
「ルナ!俺は、お前を本当の弟みたいに思ってる!後はお前に任せるからな!」
それが、僕の聞いたハルメス兄ちゃんの最後の言葉だった。
その後、神官の兵隊が来て兄ちゃんは連れて行かれた。
兄ちゃんは裁判にかけられたけど、僕はそれを見る事も許されなかった。
後で大人の人に聞いたら、兄ちゃんはほとんどの力を消されて遠い所に行ったと聞いた。
僕は、兄ちゃんの本を毎日のように読んだ。さらに、あらゆる知識を吸収した。
そして、学校に入り兄ちゃんと同じ矛盾を感じたのだ。
『僕』は成長して……『私』になった。
私は、貴方の遺志を継いで……天界を変えたんです。
でも、貴方は生きていてくれた。
今度は……どんな指針を私にくれるのですか……