〜再会の宴と永遠の夜〜
私の話が終わるまで、二人は一言も漏らさずに黙って聞いていた。私は、遠い目をしていたかもしれない。
「ルナにそんな過去があったなんてねー……だから本と時計を大事にしてたのねー」
長い付き合いだが、そんな過去を聞いたリバレスはしみじみと語った。
「あぁ、別に隠してたわけじゃないんだが……ちょっと辛い思い出だったからな」
私は、リバレスの頭をポンポンと優しく叩いた。辛い思い出も、ハルメスさんは生きていたんだ。きっといい思い出に変わる。
「ルナさん」
そこで、何だか悲しそうな顔をしているフィーネがボソッと呟いた。
「ん、どうしたんだ?フィーネ」
フィーネの表情の理由がわからずに、私は聞き返す。
「……今の話を聞いて……何だか、ルナさんがとても……とても遠い存在に思えました。私はたった17年しか生きていなくて、そんなに沢山の過去は持っていません。それに、私は空を飛ぶ事も出来ないし……あなたに、私みたいな人間は相応しくないんじゃないかって……そう思うと、悲しくて」
そう言って、フィーネは俯いた。目には今にも涙を浮かべそうな程に……不安なんだろう。
「心配いらないよ……私は、君の知ってる私のままだし……気持ちも変わらない。それに、私は遠くなんかにはいかない。私は、ずっとフィーネの傍にいるから。君がいてくれる限り、絶対に何処にも行かないんだ」
私はそう言って、フィーネの手を握り締めた。私は決意している。命を懸けてでも、フィーネを守り傍に居続けることを……
「……はい、でも」
一筋の涙を流し、フィーネが何かを言いかけた時だった。部屋の扉を叩くノックの音が聞こえる。
「宴会の準備が整いましたので、どうぞお越し下さい」
ハルメスさんの遣いだった。仕方ない。話は後にしよう。