「……くっ」

 そこで、ノレッジが立ち上がった!しぶとい奴だ……

「お前の負けだ。それ以上、邪魔をするなら命の保障はしないぞ」

 私はそう言って剣を向けた。脅しではない、リバレスを殺そうとしたんだ!

「……僕の負けなのはわかってますよ。でも、今は、妙にスッキリした気分です。僕が間違ってましたね。僕は君が羨ましくて……追いかけて……それでも届かずに……悔しかった。……君は尊敬していました。でも、段々それが憎しみに変わっていったんです。子供の頃から君と一緒で……劣等感を抱いていました。それで、君がいなくなって僕は優越感に浸りました。でも、僕は虚しかった。何故でしょうね……僕は今わかったんです。僕は……君に認めて欲しかったんだと。僕は最低です。セルファス君と君が夜中に競った時も……天界での裁判の時も僕は逃げ出してばかりだった。君達は……僕にとっての大切な大切な友達だったのに!」

 そこでノレッジは泣き出した。初めて見る涙だ。この言葉に偽りはないだろう。私はそう感じた。

「ノレッジ」

 私は思わず声をかける。しかし……

「優しい言葉はいりませんよ。僕にはそんな資格はありませんから……でも、一つだけお詫びをさせて下さい」

 ノレッジはゆっくりと私の所まで歩み寄ってきた。敵意は全く感じられない。

「これは、濃縮されたESGです。これをリバレス君が飲めば、半日もあれば回復するでしょう……僕を信用できないのはわかっています。これは捨ててくれても構いません。でも、これが今僕に出来る唯一の事だから」

 そう言って、ノレッジは私に袋を渡した。中を見れば、ESGが入っている。恐らく、これは彼の言う通りのものなのだろう。

「信じるぞ、ノレッジ。私が……計画を止めれたら、またテストで勝負しような……ちゃんと勉強しとけよ!」

 私はノレッジの肩を叩いた。よくよく考えれば……神の計画はノレッジにより、兄さんに知らされたもの。それが無ければ、私達は動く事さえなかった。もしかしたら……ノレッジは交渉という名目で、私達に危険を知らせたかったのかもしれない。

「……はは……今度こそ負けませんよ。約束します。そして……ありがとうございます」

 そこでノレッジの意識も途絶えた。私は躊躇うことなく、ESGを取り出す。

「本当に、あの人の言葉は信用出来るんですか?」

 シェルフィアはノレッジを信用していない。それもその筈だろう。本気で殺そうとしているように見えたのだから……

「ああ、あいつが本当に殺そうと思っていたならいちいち私に断りなどいれないだろ?私を挑発したのは……私に力を認めてもらいたかったからだ。こいつはそういう不器用な奴なんだ。でも、この戦いが終わればこいつも友達だよ」

 私はリバレスにESGを飲ませた。途端に、リバレスの体が光る!確かにこれは通常のESGじゃない。

「友達って難しいものなんですね。私の友達はお城の侍女ばっかりで、みんな優しかったから」

 シェルフィアは首を傾げた。確かに、私の友人は少し変わっているかもな……

「お互いを知って、認め合えるのが友達だと私は思うな……今度、シェルフィアの友達にも会ってみたいな」

 私がそう言うと、シェルフィアは微笑んだ。

「はいっ!皆にルナさんを紹介します!皆、喜んでくれますよ!」

 彼女は嬉しそうだ。しかし、リバレスとノレッジの姿を見ると素直に喜んでいる場合じゃない。

「そうだな、それは楽しみにしてるよ!でも、それは帰ってからのお楽しみだから……今は先を急ごう!」

 私がそう言うと、シェルフィアは我に返ったようで顔を赤くした。

「はいっ……そうですね!」

 こうして、私達は1500階を飛び立った。勿論、眠っているリバレスも抱えながら……

 

 

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