「馬鹿にするのも大概にして下さいよ!僕は『死の司官』!天翼獣如きが僕の相手をするなんてね!リバレス君、君を倒した後に人間界もろとも全員を滅ぼしてあげますよ!」

 ノレッジはそう言うと、かつて神官が使っていた豪壮な杖を掲げた!途端に、神術のエネルギーが漲る!

「人間界は滅びない!滅びるのはむしろ天界の方よー!」

 リバレスも力を解放した!私は、いつでも動けるように身構える。

「リバレスさん、大丈夫ですか?」

 シェルフィアがは、戦いが今にも始まろうとするのを心配そうに見つめる。

「少し心配だけど、信じてみよう」

 私がそう言った瞬間、戦いが始まった!

「高等神術……『拘束』!」

 戦闘開始早々に、ノレッジは『拘束』を放った!これにつかまれば、リバレスは終わりだ!

「いきなりそれは卑怯なんじゃないのー!?……同じく高等神術『光刃』!」

 拘束と光刃がぶつかる!

「パキィィン!」

 両者のエネルギーが空中で相殺した!

「天翼獣が高等神術を使うなんて聞いた事がありませんよ!まぁ、それでいい!僕の相手をするのですから!」

 二人とも肉弾戦には向かない。恐らく、神術のみの戦いとなるだろう!

「今度はこっちの番よ!『滅炎』!」

 私が得意とする炎の高等神術だ……直径数mの炎の渦がノレッジを襲う!

「くっ……『氷壁』!」

『氷壁』は高等神術『絶対零度』を守りに用いたものだ。互いに譲らない!

「ゴォォ!」

 炎が氷の壁にぶつかる!だが、氷はほとんど溶けない!

「ははは、その程度ですか!」

 氷の向こうでノレッジが笑っている。すると!

「あんまり油断しない方が身の為よー!」

 リバレスが、高速で飛び回る!一体何を!?

「連続……『滅炎』!」

 何と、リバレスは四方八方から炎を放ったのだ!これでは、氷壁では防げない!

「うっ……うわぁぁ!」

 炎がノレッジに炸裂する!その瞬間、神術で出来た氷は消滅した!やったのか!?

「そっ……そんなー!」

 煙が晴れて現れたのは……無傷のノレッジ!究極神術の『光膜』で自身を守っていたのだ!

「今のは危なかったですよ。本気で行かないとダメみたいですね!」

 ノレッジは光膜で守られている。その強度は、私のものよりは遥かに劣るが……それでもリバレスの神術なら完全に弾くだろう。

「『拘束』!」

 リバレスがノレッジの動きを止める為に、『拘束』を放つが……光膜はそれを完全にかきけす!

「動きを止めたいのならば……これぐらいじゃないと!」

 ノレッジが杖に向かって意識を集中した。まさか!

「リバレス!逃げろ!」

 私の声に気付いて、リバレスが動こうとした瞬間!

「……究極神術……『不動』!」

 かつてジュディアが私を動けなくした神術!それをリバレスが解けるはずがない!

「キャァァー!」

 リバレスは『不動』に囚われ、床に落ちた……もはや私が出ていくしかないだろう。

「さぁ、終わりです。ルナリート君、早く来ないと大切なペットが死にますよ!」

 リバレスをペット呼ばわり……私は怒りが沸いてくるのを感じた!

「(ルナー、聞こえる?わたしはまだ大丈夫……だけど一つお願いがあるのー!)」

 そこで、リバレスの意識が転送されてきた!良かった、無事だったか!

「(ああ、何でも言ってくれ!)」

 その様子をノレッジに気付かれないように、私は剣を抜き睨みつけた。

「(『あれ』の術式を教えて欲しいのー)」

 まさか……『あれ』は負担がかかり過ぎる!本来、エファロードのみが使える神術だ!

「何をしているんです!?君が来ないのなら、『魂砕断』でこのペットの魂ごと砕きますよ!」

 時間が無い!私は躊躇した。だが、教えるしかない!

「(ruinだ!)」

 私は咄嗟に意識を転送する!

「(ありがとー!)……禁断神術『滅』!」

「……えっ!?何だ!?」

 エファロードしか使えないはずの、『滅』が発動した!大きさは数十cm程度だが……光膜を消し去り、ノレッジの精神力を全て吸収した上に杖を破壊して『滅』は消えた!

「……そんな……馬鹿な」

 精神力を失ったノレッジはその場に崩れるように倒れた!私はすぐさまリバレスに駆け寄る!

「リバレス!大丈夫か!?」

 私は倒れているリバレスを広いあげた。すぐに、私の精神力を注ぎ込んだ!

「……あの神術……やっぱりルナみたいな力がないと使っちゃダメねー……体中の力が全部無くなっちゃったわー」

 私が精神力を足しても、リバレスの疲労には追いつかない!リバレスは、意識を失った。

「リバレスさんっ!?大丈夫ですか!?」

 シェルフィアが涙目でリバレスを揺さぶる。

「……大丈夫だ。命に別状は無い。教えた私が馬鹿だったんだ!」

 私は自分のした事を悔やんだ。死に至る事はないが、いつ目覚めるかわからない。

 

 

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