〜最後の晩餐〜 フィグリル城の屋上の会議場、私達は明日の為に集った。空には無数の星々……そして、柔らかな風が吹いていた。冬は過ぎ去り、もうすぐ春が訪れる。それを感じるような優しい風だった。屋上には、私達4人と多数の料理……そして、兄さんが精製した美酒があった。その酒は天界のものと同じで、強いアルコールとほのかな甘さがある。私達はそれの入ったグラスを取った。 「集いし心に……乾杯!」 兄さんがそう声を上げると、私達は互いにグラスをキンッと鳴らした。 「やれるだけの事はやりました。後は全力を尽くしましょう!」 私は周りを見渡し、そう言った。皆はそれに頷く。 「必ず……平和の為に……幸せな世界の為に!」 シェルフィアも精一杯の強い言葉を発する。 「頑張りましょー!」 リバレスも元気良く声を張り上げる。私達の決意には一点の曇りもない。 「ああ、人間達も一つにまとまっている!この70日間で、一致団結し強固な守りを作った。俺が驚く程のな……だから、俺達は何も心配する必要はない。ベストを尽くすだけだ!今日は、『人間界』で行う最後の晩餐……しかし、俺達の作戦が成功した暁には『新しい世界』で最初の祝宴を開こう!」 兄さんは上手い事を言うものだ。確かに、計画を中止させ……獄界への道を閉ざせば、この世界は生まれ変わるだろう。 「はい、必ず!全員……生きて再会しましょう!」 私はそう叫んだ。それが心からの願いだからだ。ここにいる誰も失いたくない。みんな必要なんだ。 「ルナさんの言う通り……約束ですよ!」 シェルフィアは全員の顔をじっと見つめた。その表情は真剣そのものだ。 「ああ、約束だ!」 「約束するわー!」 それに気圧されてか、兄さんもリバレスも即答した。 「ところで、皆今日は何の日か知ってるか?空を見るといい」 そこで、突然兄さんが言った。全員が空を見上げる。すると! 「……流星群ですか!?」 私が一番にそう言った。空に数え切れない程の彗星が流れているのだ。 「綺麗」 シェルフィアの視線が空に釘付けになる。 「この流星群は、500年に一度現れるんだ。俺はこれを『ティファニィ流星群』って名付けてる」 兄さんは微笑みながらそう言った。ティファニィさんへの愛がとても感じられた。見たこともないような幸せ顔だったからだ。 「それじゃー、ティファニィさんにも明日からの成功を祈ってもらいましょー!」 と、リバレスも何故だか嬉しそうに言った。確かにそれはいい案だ。 「(私達は……この星に生きる者の平和と幸福の為に戦います。どうか、私達が皆無事で再会出来ますように)」 皆の願いも同じだろう。4人は目を閉じていた。そして、不安なのかシェルフィアが私に寄り添う…… 「大丈夫だよ。私達は『永遠の心』と『幸せの約束』で結ばれてる。決して離れたりはしないから」 私はそう言って、シェルフィアと手をつないだ。暖かい……それだけで、恐怖も孤独も悲しみも苦しみも全てが消え去る。 「ルナ、シェルフィアを不幸にするんじゃないぞ!」 私達の様子に気付いたのか、兄さんは振り向きもせずにそう言った。 「ずっと仲良くするのよー!」 リバレスまでそんな事を言い出す。一体、何故今そんな事を言うんだよ? その後、私達は明日に備えて部屋で休む事にした。リバレスは、何故か兄さんと話があるらしく私の部屋にはいなかった。 明日から戦いが始まる。そんな不安と寂しさで、私とシェルフィアは深く愛を紡ぎあった。過ぎる時間が憎い程に…… しかし……いつしか眠りに落ち、運命の日を迎える事になる。 兄さんとリバレスの本当の決意など知る事もなく…… | |
目次 | 第八節 |