【第八節 未来の為に】

 

「さぁ、出発だ!」

 運命の朝、日が昇った瞬間兄さんがそう叫んだ。

「行きましょう!」

 私とシェルフィアとリバレスはそれに呼応する。ここは、フィグリル城屋上……ここから私達は飛び立つ。

「ルナ、頼むぜ!お前は……最高の弟だ!」

 兄さんと私は同時に光の翼を開いた。飛び立つ直前、兄さんはそう言って笑みを見せた。

「はいっ!ハルメス兄さん、あなたは、私に全てを教えてくれました!あなたは師であり、最高の兄です!」

 私達は拳をぶつけあった。もうこれ以上の言葉はいらないだろう。

「シェルフィア!しっかりつかまってろよ!」

 私はシェルフィアを抱きかかえて飛び立った。リバレスは、指輪に変化している。

「はいっ!皇帝、行ってきます!それから……どうか、ご自愛を!」

 私達はもう城の上空にいる。兄さんとは、ここでしばらくのお別れだ。シェルフィアは、背を向ける兄さんにそんな言葉をかけた。

「ああ、俺の心配はいらないぜ!お前達……何があっても……前へ進むんだぞ!」

 何故か兄さんはこちらも向かずにそう叫び、飛び去っていく!

「兄さん!約束通り、新しい世界でまた会いましょう!」

 私は目一杯の声で叫んだ。すると、兄さんは拳を作って空に突き出した。力強い意思表示だった!

「ルナー!私達も行きましょー!」

 リバレスの声の直後に、私は『贖罪の塔』へ向けて出発した。一度も行った事のない場所には、『転送』で移動することは出来ない。塔への距離は、ここから北北西に500km程度。体を光膜で包みながら全速力で飛べば、5時間もかからないだろう。

「ルナさんっ!帰ったら……結婚式挙げましょうね!」

 塔へ向かう途中、シェルフィアは指輪をギュッと握り締めてそう言った。

「ああ、皆に祝ってもらおうな!」

 私がそう言うと、シェルフィアは嬉しそうに微笑んだ。

「はいはーい、ちゃんと祝ってあげるから頑張りましょうねー!」

 リバレスの『やれやれ』というような表情が目に浮かぶ。どんな苦難でも、4人なら乗り越えられそうな気がした。

 私は更にスピードを上げて、目的地へと急いだ。

 

〜越えるべき障壁〜

 天高くそびえる塔……そこに到達したのは、丁度昼頃だった。頂上は見えない。恐らく、獄界への道と同じ程度の高さ。

「扉が閉まってるわねー」

 リバレスが巨大な扉に触れるがビクともしない。扉だけで高さと幅が5mはある。勿論、オリハルコン製だ。

「仕方ない、手荒だが破壊するか」

 私が剣を構え、力を集中する。その時!

「ギィ」

 何もしていないのに扉が開いたのだ。

「開きましたね。行きましょう!」

 開いた扉に最初に入っていくのはシェルフィア。

「おい、待てよ!全く……変わってないな」

 無謀な所は変わっていない。私はすぐに追いかけた。

「本当に。急ぎましょー!」

 

 

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