【第七節 集いし心】 リウォル王との約束の朝、私達は再び王の下に招かれた。 「皆の者!人間の友であるルナリートの言う通り、本日を以って戦争の終結とする!これより、3ヶ月間来るべき脅威の日に備えて全ての人間が手を取り、力を蓄えよう!そして、その後の平和の為に我々一人一人が命を懸けようではないか!」 王が、街を見下ろせる城の演説台に立ちそう叫んだ。そうだ、この日……人間達の争いは終結したのだ。 「わぁぁ!」 数千……数万の群集が王を称えて叫ぶ。流石に人間達の王だけあって、意識の統一化を進める技術は大した物だ。 「さぁ、ルナさん。皇帝の下に戻りましょう」 薬指に輝く指輪を右手で大事そうに包みこんでいるシェルフィアがニッコリと微笑んだ。 「ああ、戻ろう」 この日を境に人間達は皆3ヶ月後の計画と、私達の存在を知るようになる。私やシェルフィア、兄さんやリバレスの事も……自分達の世界を守る戦いだ。全ての人間の心は一つに集り、襲い来る恐怖に打ち勝っていた。 〜帰還〜 「よくやったな!お前達!」 私がリウォル王から受け取った手紙を兄さんに見せると、すぐに兄さんの表情は喜びに変わった。 「はい!後は、来るべき日に備えるだけですね!」 私とシェルフィアも素直に喜んだ。 「ルナー、シェルフィアー……お疲れ様ー!」 修行で疲労したのだろうか、フラフラのリバレスも喜んでくれた。 「今夜は、祝宴にしよう!そして、その時に……これから先の予定を話すぜ」 兄さんは嬉しそうに……しかし、どこか決意めいた表情でそう言った。 「はいっ!皇帝、今日の祝宴の料理は私も手伝いますよ。私は副料理長ですから」 そこで、シェルフィアが名乗り出る。そうか、彼女は副料理長……どうりで料理がうまいわけだ。 「そうか?お前はゆっくりしていていいんだぞ」 兄さんが驚いたような顔でそう言った。 「いえ、いいんです!リウォルで、嬉しい事があって……今日は、何だか美味しい料理を皆に食べて欲しいんです!」 そう言う彼女の顔は、見ている者まで幸せにするような笑顔だった。 「ほう……なるほどな」 「ルナもやるもんねー!」 同時に二人がシェルフィアの指に注目する。何て鋭いんだ。私は顔を赤くした。 「それじゃあ行ってきます!」 シェルフィアは足取り軽く、厨房へと走って行った。 夕食までの時間、私とリバレスは久々に二人になった。 「何だか、最近シェルフィアにルナを独占されて寂しいわー」 開口一番、それがリバレスの最初の一言だった。 「そんな事は無いって!お前のお陰でここまでやってこれたんだから。それはそうと、修行はどうだったんだ?」 私は少し慌てながら、リバレスの頭を撫でた。 「まーいっか。ルナ達が幸せなら、わたしも嬉しいしねー!修行は順調よー!わかる?」 少し落ち込んでいたリバレスがそう言って、目を閉じた。途端に、彼女の中から力が溢れ出す! 「へぇ……すごいじゃないか!以前の10倍ぐらいの力を感じるぞ!」 兄さんは一体どんな修行をしたんだろう?シェルフィア程ではないが、通常の天使を遥かに上回る力だ…… 「すごいでしょー!?秘密の特訓よー!」 彼女は嬉しそうに飛び回った。まだまだ、子供っぽいな。 「ああ、すごいすごい。これで、3ヶ月後大活躍間違いなしだ」 褒めたつもりだった。しかし、彼女は意外な反応を示す…… 「……うん。そうねー……わたし頑張るからねー!」 何だか悲しそうな目……一体どうしたんだ? 「……どうしたんだ?」 長い付き合いだ。様子がおかしければすぐに気付く。 「……えっ?何でもないわよー!それより、ルナ君……あの指輪は何かなー!?」 理由は答えず、悲しい素振りを消してすぐに明るく振舞う。深くは聞かない方がいいのだろうか?それはそうと…… 「……指輪!?あぁ……あれは指輪だ」 私はリバレスの突然の質問に戸惑った。知られるのが恥ずかしかったからだ。 「婚約指輪かー……シェルフィアは幸せ者ねー!大事にしないとダメよー!」 リバレスが笑いながら私の背中を叩く。私は何も言い返せなかった。 「……(例え……わたしがいなくてもね。)」 彼女がそこで何か言ったような気がしたが、私には聞き取れなかった。 「……ん?何か言ったか?」 私が尋ねてもリバレスは答えなかった。夕食までの時間、私達は今までの思い出話に花が咲いた。 もし……この時のリバレスの決意を知っていたら……私の心は | |
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