〜未来の証〜 明日は、王が結論を出す日。明日からは忙しくなるだろう。私はこの日にすべき事を前々から決めていた。朝食を食べて、ネグリジェを着たシェルフィアが身支度を始める時間……その間に、私は自分を転送させて宝飾店に向かいすぐに戻ってきた。その時間10分以内だ。歩いて往復すれば40分はかかる。こんな事をしなければならなかった理由は、長時間シェルフィアから離れると心配される上に不信感を与えるからだ。それに、何より私はシェルフィアを驚かせたかった。今日は忘れえぬ日になるだろう。実行は夜。 「ルナさん、今日は何処にいきましょうか!?」 今日もシェルフィアは元気いっぱいだ。そうだな、今日は晴天。海辺にでも行くか。 「海でも見に行こうか?」 私はそう言った。200年前にも、リウォルでは砂浜を歩いたな。 「はいっ!ルナさんとなら何処へでも!」 シェルフィアはそう言って、腕を組んできた。少し照れくさかったが、嬉しさの方が勝っていた。 今日のシェルフィアの服は、白のシルクのワンピース。そして、薄桃色のコート。昨日買った服だが、よく似合っていて少し大人っぽく見えた。 私も……今日は、黒の戦闘服をやめた。散々シェルフィアに別の服が見たいと言われたからだ。私は、黒のレザーパンツとジャケット。それは良かったのだが、赤のセーターを着せられて恥ずかしかった。こんな服は今まで一度も着た事がない。 「シェルフィアはよく似合ってるけど、私の服装はおかしくないか?」 歩きながら、私は顔を赤くして聞いた。 「えっ?すごく似合ってますよ!ほら、みんな注目してるし」 シェルフィアがそう言ったので、私が周りを見渡すと確かに注目を浴びていた。それが羨望なのか、奇異の目なのかはわからないが。 「……ルナさん!他の女の子に興味を持ったらダメですよ!」 私がしばらく周りを見ていたので、シェルフィアが私の頬をつねる。 「痛いっ!大丈夫だよ、絶対そんな事は無いから!」 そんな事は無いと言いきれるが、もし誤解で彼女を怒らせたら恐いな……炎で焼かれそうだ。 「冗談ですよっ、ルナさんはそんな人じゃないから」 シェルフィアは微笑んだ。フィーネとシェルフィアが一つになって……性格が明るくなったな。私はそう思っていた。 街で昼食を食べた。ロブスターのグリルが美味しかったのは忘れない。その後、砂浜を二人で歩いた。冬の風は少し冷たかったが、今日は晴れていたので心地良かった。二人で話しながら歩いていると、すぐに時は経ち夕方になり日が落ちようとしていた。 「シェルフィア、目を閉じて」 私は立ち止まり、そう言った。 「え、何ですか?」 彼女は驚いたように聞き返す。 「いい事だよ」 私は短くそう告げる。シェルフィアは何かを悟ったらしい。ゆっくりと目を閉じた。 「いいって言うまで目を開けたらダメだよ」 私がそう言うと、彼女は黙って頷いた。今日、シェルフィアに隠していた事を説明するって言った事を覚えているみたいだった。 「しっかりつかまってるんだよ」 私は、そう言ってシェルフィアを抱きかかえた。そして、翼を開く……景色は瞬く間に小さくなっていった。 「空を飛んでるみたいですね」 シェルフィアは約束を守り、目を閉じたままだ。 「ああ、でももうすぐ着くからもうしばらく待ってくれよ」 こうして向かった先……そこは…… 「目を開けてもいいよ」 私がそう告げると、彼女はパッと目を開いた。 「ここは……あの時の湖!」 そうだ……ここは、私達の心が初めて通じ合った場所。200年の時を経ても何ら変わっていない。しかも、あの時と同じ下弦の月が輝く。それが遠くの山々の雄大な影を作っているのだ。空には一面の星々……一点の曇りすらない。優しい風が、時折水面を揺らす……それでも、静かな湖面は柔らかな光を映し出していた。 ここにあるのは、私達二人と……それを包む優しい自然だけだった。 「覚えてるみたいだね。ここに来たのには理由があるんだよ」 驚いているシェルフィアに私は微笑んだ。 「理由ですか?教えて欲しいです」 清澄な空気の中で彼女の澄んだ声が響く。 「隠していたのは悪いと思ったんだけど、どうしてもびっくりさせたくて」 私は、上着の内ポケットから小箱を取り出した。 「え……何ですか?」 彼女は首を傾げる。真剣な私の様子に、彼女も緊張しているようだ。 「開けてみてほしい」 私も少し緊張してきた。思わず声が小声になる。 「……これは!?」 彼女は驚いた。それもそのはずだ……中にあったのは、眩い虹色の光を放つ宝石を纏った指輪だったからだ。 「……シェファで作った指輪だよ」 私は、そっとその指輪を手に取った。 「……私は、永遠に君を愛し続ける。約束するよ……君を必ず幸せにするって。だから……この先に待つ戦いが終わったら」 「……結婚しよう!この指輪はその約束の証なんだ」 私は胸が震えながらも、じっとシェルフィアの目を見つめてそう言った。 「……はいっ!喜んで!」 シェルフィアは嬉しさに涙を流していた。私は、そんな彼女が愛しくてギュッと抱き締めた。 その後に、シェルフィアの左手薬指に指輪をつけた……そう、幸せな未来の証となる婚約指輪を…… 「……愛してるよ」 「……愛してます!」 私達は誓いの口付けを交わした。 そして、時が過ぎるのも構わず……抱き合っていた。お互いの存在を確認しあうように…… 初めて出会ってから、もう200年以上も経ったけど、ようやく約束できたね…… 私達の心は愛しさで溢れていた。こんなに心が満たされるなんて知らなかったよ…… 永遠の心と愛はこれからも続いていく……どんな苦難が 例え、肉体が死んでも心は離れない。それも証明 色んな奇跡があって、今私達はここにいる。 結婚して幸せな家庭を作る。それを約束したんだ。 だから、3ヶ月後の戦いでそれが破られたりはしない。 勿論それが天界、人間界、獄界全てにとっての平和ならば だが……私が戦うのは君の為……最後まで私の隣にいるのは 戦いがどんな結末を迎えるかはわからない。どんなものが でも一つだけ言える。 私には君だけがいればいい……例え、他に何が失われようとも。 エゴでも偽善者でも構わない。私は一度君を失ってわかって 君は、私の生きる意味そのものなのだから…… 二度と……悲しみは繰り返させない。 明日からはまた大変になるな。 永遠は、『今』の積み重ねだ……大事にしなければならない。 この日の夜は……甘く激しい時が続いた。まるで時が | |
目次 | 第七節 |