「……まずいな」 私は、ナイフとフォークを置き思わず呟いた。 「えっ!?そんな事ないですよ!美味しいですよぉ!」 フィーネは私の真剣な顔と行動に驚いていた。 「冗談を言ってるんじゃない!早くこの店を出るんだ!」 「えっ?えっ!?」 私は椅子から立ち上がり、フィーネの体を抱えた!説明している暇はない! 「(何!?この物凄いエネルギーの波は!?)」 リバレスも目覚める!強力なエネルギーが遠くで集約されているのを、私は感じたのだ! 私はフィーネを抱えて全速力で走る!そして、そのまま海に飛び込んだ! その瞬間! 「ピカッ!」 強烈な閃光と波動がリウォルの街を貫いた! 「ドゴォォー……ン!」 凄まじい轟音と衝撃が襲う!私達はその時には海に潜っていた! そして……静寂が訪れた。 「キャァー!」 街の光景を見たフィーネが思わず叫んだ!それも、その筈だ。街が……街が幅50mに渡って直線状に消滅していたのだから! 「何て事だ」 海から上がった私達は愕然とした。幅50m、長さにして1kmぐらいが跡形も無く消えている。建物も人も森も大地も……何もかも! 「どうして!どうしてこんな事になるの!?」 フィーネは泣き崩れた。さっきの料理店も消滅している。 「ルナ、この跡は」 思わず元の姿に戻ったリバレスが囁く。 「あぁ……これは……『S.U.Nブラスター』の攻撃に間違いない。超エネルギーの星であるS.U.N(この世界では太陽と呼んでいるが)から降り注ぐエネルギーを変換して、光線を照射する禁断の兵器だ!」 私は、この圧倒的な破壊力を見てそう確信したのだ。さっき食事中に心配していた事が現実になった。古代の塔には天界に由来する物があるかもしれないと危惧していた事が!『S.U.Nブラスター』は天界の兵器!誰かが持ち出したのか!? 「幸い……ほとんど使いこなせてないみたいだけどねー……100%の出力を出せば、この街の全てを消すぐらいわけないから!」 リバレスは身震いしながらそう言った。一体誰が……何の為に!?いや、待てよ……光線が照射された方角を辿ると…… 「使用された方角には、リウォルタワーがある!現在そこは魔物の本拠地らしい。兵器を使ったのは、恐らく高度な知能を持つ魔物だ!さっきの一瞬で数百……数千の命が奪われた。許す事は出来ない!」 私は声を荒げて叫んだ! 「どうするのー!?ルナ!」 リバレスも怒りを露にして私の顔を覗き込んだ。 「叩き潰す!こんな残虐な真似を許せる程、私は穏健ではないからな!」 その時、フィーネが立ち上がった! 「……私も行きます!許せないから!」 と、フィーネも今まで見た事もない程の形相に変わった。 「ダメだ!今回は危険この上ない戦いになる。相手は禁断の兵器を使う者。私は君を守りきれる自信がない!」 私は真剣な表情でフィーネをなだめた。大切なフィーネを危険に晒したくはない! 「でも!」 フィーネは涙を拭いて、この街で買った新しい剣を抜く。 「頼む!ここにいてくれ……ここにいて、傷ついた街の人々を助けてやってくれ!」 私は、怒れるフィーネを抱きしめて街を指差した。街からは火の手が上がり、傷つき逃げ惑う人々の群れが夜闇に映っていた。 「……わかりました。決して無理はしないで下さいね……私は、ルナさんが」 剣を落とし、涙声で私を心配するフィーネは途切れ途切れに言葉を発した。 「わかってる。私は必ずフィーネの元に戻る!だから、その言葉の続きは……今は無しだよ」 私は、フィーネを強く抱きしめて優しく髪を撫でた。そして、必ず戻ってこれる事を信じてリウォルタワーへと全速力で駆け出した。 この時、私は行く先に待ち受ける運命を知る由も無かった。 | |
目次 | 第十節 |