「……獄界へ堕ちるがいいわ!」 その言葉の直後、フィーネの胸の上に『漆黒の剣』が出現する! 魂が獄界に堕ちる。それは……魔に忌み嫌われている『人間の魂』が獄界に来る事を意味する! 堕ちた魂は切り刻まれて……汚されて……壊される! しかも……天界と人間界で死んだ者の魂は転生するが……獄界に堕ちた魂はどうなるかわからない! 「殺すのよりも……ずっとひどいじゃないのー!」 「やめろぉぉー!」 俺達は同時に叫んだ!しかし! 「禁断神術……『堕獄』!」 禁じられし神術の刃が、たった一人の心優しい少女の胸を貫く! 「ルナさぁぁ……ん!」 俺は、目を閉じる事も出来ずに!唯……魂を裂く刃が……最愛の人に突き立てられる瞬間を見るしかなかった!それと同時に……俺の心の一部が、音も立てずに砕けた……そして、心が狂奏曲を奏でる。無音の…… 「いい気味ね……これで、正気に戻ったでしょ。ルナ?」 フィーネに刃を突き立てた張本人が、悪びれた様子も無く俺に語りかける! 「……ジュディア……貴様にわかるか!?俺の心が!」 俺を包む『不動』の膜に亀裂が入る。呼吸が際限なく早くなる! 「……さぁ……わからないわね」 ジュディアは答えながらも、俺の異変に気付いて後ずさりを始めた。 「……様々な感情……愛情……憎悪……後悔……悲嘆……全てが……俺の心の中で今……濁流となって荒れ狂っている!……心が熱い……頭が熱い……俺の全てが炎に包まれる!」 「うあぁぁ!」 俺を包む炎の濁流は、俺の意識さえも支配し始めた! 髪は銀色……目は真紅……光の翼が現れ……普段の俺の意識も遠くに感じた…… 「……な……何なの!?」 『不動』を解除して、歩き始めた俺にジュディアは驚きを見せる。しかし、逃げようとはしない! 「そこをどけ!」 俺はフィーネに向かって歩いて行こうとしているようだった。今は自分を制御出来ない! 「……嫌よ!」 今の俺の力は、恐らく普段の数万倍だろう。俺に敵対するなど……何と無謀な事か! 「……それならば、死ぬがいい!俺は全てを超越する者……エファロードの後継者!俺の邪魔をする者は……全て滅ぼし尽くす!」 制御出来ない俺は、勝手にそんな事を話した!だが、フィーネに近寄る為にはそうするしかないのは理解できる! 「……(ルナー、何て怒り……憎しみ……それよりも、今までの変化よりも桁違いに大きな力……ここにいるだけで焼き尽くされそう!)」 リバレスがそう思っているのが、俺に伝わった。今の俺にはそんな能力まであるのか!? 「……私は本気よ!絶対に行かせない!」 圧倒的な力の差に震えながらも、俺の心を引き戻したいのだろう。必死に食いついてくる。 「……愚かな……力の差も見抜けぬ下衆め……覚悟するがいい!」 それからはよく覚えていない。唯、ジュディアの放つ攻撃の神術は俺の皮膚にさえ届く事は無かった事は確かだ。 そして…… 「エファロードのみが使える神術だ……『滅(ruin)』!」 俺はそう言い放った。すると、全てが滅びる直径3m程の虚無の空間が現れた。空間は、部屋を駆け巡り触れる物全てを飲み込む! 外壁、輝水晶……空気さえも残らない!呼び出された虚無はジュディアの翼と肩の一部も飲み込んだ! 「……クッ!……絶対に……後悔する事になるわよ!……どうせ200年後には!」 『滅』で大怪我を負ったジュディアは自分自身に『転送』を使い消え去った。 すると……制御出来なかった意識は俺の元へと戻ってきた! 「フィーネー!」 俺は、すぐにフィーネの元へと駆け寄った!
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