〜第三楽章『終の狂奏』〜 「フィーネ!」 やっと、フィーネを見つけた!しかし……フィーネは、『虹色』の輝水晶で出来た祭壇に仰向けで拘束されている! 唯……顔だけがこっちを向いていた。 「ルナさんっ!危険だから……逃げて!」 身動き出来ないフィーネが、最初に発した言葉がそれだった。余程恐い目に遭ったのだろう。 「遅かったわね。でもいいわ。お陰で準備は整ったから」 ジュディアが、驚くほど冷酷な笑みを浮かべた……そして、フィーネと私の間に立ち塞がる! 「何をする気だ!フィーネを返せ!」 私は、剣をジュディアに向ける!ジュディアの出方によっては、本気で剣を振る覚悟だ。 「ふぅ……そんなに焦らないでよ。そんな物騒な物を私に向けて……私は、あなたに協力しようとしてるだけなのに」 予想外の返事だった。協力だと? 「協力って何よー!?」 リバレスが叫ぶ!一体ジュディアは何を考えている!? 「そう、協力よ。知ってる?この遺跡の意味を」 ジュディアは、からかう様な口調で私を見つめた。 「……獄界への道を封じる装置のようなものだろう」 私は記念碑を総合してそう答えを出した。一つ気になるが…… 「流石ね……でも、そのエネルギー源は何なのかわかる?」 ジュディアが不気味な笑みを浮かべた…… 「……まさか……本当に『魂』……なのか!?」 私は顔を蒼白にして、訊き返した!この答えは間違いであってくれ! 「……その通り!でもね、この遺跡を作動させるには……10000の魂が必要なの」 そこで、ジュディアはフィーネの方を振り返った! 「ジュディア!フィーネを生け贄にするつもりか!?」 その瞬間に、俺の髪は銀色に変わった!力が膨れ上がる! 「ルナ、話は最後まで聞く物よ」 ジュディアは、その言葉の直後……俺に奇妙な術をかけた…… 「究極神術……『不動』よ。『拘束』よりも遥かに強力で、指先を1mm動かす事も出来ない。それと同時に、体の変化を停止させる。今の私じゃあ、それ以上力の増えたルナは相手に出来ないから。でも安心してね……口だけは動かせるようにしたから」 全く動けない!同時に、力の増大も停止させられている! 「……ふざけるのは……いい加減にしろ」 何とか動かせる口で俺はそう言った。しかし、ジュディアは俺を無視して続ける。 「まぁ、結論から言えばこの娘は名誉ある『生け贄第1号』って事になるわね。最近、魔の進行が激しいのはあなたもよく知っているでしょう?このまま行けば、天界まで侵略される恐れもあるの。それで、獄界への道を封じる手段を探しに私が天界から派遣されたわけ。私はこれが成功したら表彰されるし、ルナだって魔と戦わなくてよくなる。一石二鳥じゃない」 ジュディアは淡々と話を進める。だが、フィーネを生け贄にするだと!? 「……魔なんてどうでもいい!だが、フィーネを殺したら俺がお前を殺す!」 俺は、ジュディアを睨み付けた!すると、今まで淡々と話していたジュディアの顔と口調が急変する! 「私を殺す!?とうとうそんな世迷言を!……あなたは最高の天使なのにも関わらず、下等な人間に情を抱いた!……許せない!どうして、そんなにもこの女にこだわるの!?私がいるのに!何故、下らない人間の為に命を懸けるの!?人間なんて、天界のゴミに過ぎないのに!?この世界は、ゴミ捨て場なのよ!」 ジュディアは、感情を剥き出しにして叫ぶ!そして、俺の襟を強く掴んだ。 「……黙れ……お前のような高慢な心では、生涯理解できはしないさ」 俺は動けなかったが、ジュディアにはっきりと言い放った。 「ジュディアー!人間の魂だって、天使と変わらないのよー!」 そこで、リバレスが加勢する!俺は、そんなリバレスを誇りに思う…… 「『蝶』は黙りなさい!」 しかし、加勢も虚しくリバレスは『拘束』されて地面に落ちた…… 「……まさか、ここまでルナの心が蝕まれているなんて……哀れだわ。でも、仕方ないわね。私が、3日で人間を1万人殺してあげる。……それで、あなたの呪縛は解けるわ。フフ……だから、まずはこの娘に死んでもらう!」 ジュディアに、とてつもないエネルギーが集約されてくる!『魂砕断』よりも強力な力が! 「待て!待ってくれ!殺すなら……俺を殺せ!フィーネは助けてやってくれ!」 本気でフィーネを殺そうとしているジュディアに俺は懇願した!フィーネが助かるなら俺はどうなってもいいんだ! 「……いいんですよ、ルナさん、私が悪かったんです。天使のあなたに……無理なお願いばっかりして……さぁ、ジュディアさん、私を殺して下さい……それで、ルナさんを許してあげて下さい」 フィーネは涙を流しながら、俺を見つめて優しく微笑んだ。それを見た俺の目からも涙が溢れる。 「人間如きが、気安く名前を呼ぶんじゃないわよ!……ルナ、あなたは馬鹿だわ。人間の女なんかに想いを寄せるなんて……私はずっと……ずっと……あなたの事を愛していたのに……受け入れてくれなかった」 ジュディアは……愛せない。俺はフィーネだけを愛しているんだ。 「お前には悪いと思うが……俺はフィーネを愛してるんだ!これからは、俺の事など相手にしなくていい……忘れてくれてもいい! だから……お願いだから……邪魔しないでくれ!」 俺は動かない顔の……ほとんど動かない目でジュディアを見つめた。今は瞬きをする事も出来ない。 「……決めた。この娘を殺すのはやめにする」 ジュディアは急に微笑んだ。しかし、助けてくれるなら何でもいい! 「……本当に助けてくれるのか!?」 俺は、必死の思いでジュディアに訊いた。 「……フフフ」
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