〜街への帰還〜 私達が、我に返ったのは夜空が段々と白み始めたのに気付いたからだ。すると、何だか少し恥ずかしくなった。 「あっ……私はずっと……ルナさんの傍にいていいんですよね?」 その様子に気付いたフィーネが、少し不安がってそう訊いた。 「勿論だよ。フィーネがいるから、私は戦い続ける勇気が沸いてくるんだ。それに、君は初めて私が好きになった人だから」 私は、照れながらも安心させるために正直な言葉を伝えた。リバレスがここにいなくて本当に良かった。 「……えっ……ルナさんみたいな素晴らしい人が!? でも、嬉しいです」 本当に嬉しそうだった。天界で恋をした相手がいない事が嬉しいのか、今、自分自身が愛されている事が嬉しいのかは分からないが。その後、手をつないで歩いてリウォルの街へと向かう途中で突然何者かに声をかけられた。 「遅いー!」 その声は紛れも無くリバレスだった。私達は咄嗟につないでいた手を離したが…… 「もー……バレバレなのよー……仲良くするのよー!」 と、渋々顔のリバレスが飛んできて私の指輪に変化した。その様子に、私とフィーネは声を上げて笑ったのだった。 そして、朝焼けに染まる頃……クタクタに疲れた私達はリウォルの街の宿に帰って熟睡した。 午後三時頃…… 「コンコンコン」 私達の部屋のドアを叩く音で、私は目を覚ました。時計を見ると、午後三時を過ぎていた。私にしてはよく眠ったものだ。 宿屋の主人だろうか?私は眠っているフィーネはそのままに、そっとドアを開けた。 「どうしたんだ?」 私がドアを開けると、そこには風格のある初老の男とその付き添いの者が二人立っていた。宿の者じゃないな。 「一つお伺いしますが……リウォルタワーは貴方達が沈めてくださったのですか?」 初老の男が私に尋ねた。その表情からは、何を言いたいのかを察することは出来ない。 「まぁ、そういう事になるかな。それが、どうかしたのか?」 私がそう言った瞬間だった。 「やはり!街の者が、塔へ向かう貴方を見たのです!貴方が向かって数時間後に塔は崩れ去りました。これを偶然とは考えられなかったので……今回、直接貴方の元を訪ねたのです」 初老の男は少し皺のある顔に笑顔を浮かべ、連れ添いの者は手を取り合って喜んでいた。 「それで、他に何かあるのか?」 なかなか本題を言おうとしない男に、少し怪訝な顔をして訊いた。 「私は、この街の長です。今日は、あの忌まわしき塔が消えた記念のパレードを行います!それに、是非主賓として参加して頂きたくここに参りました!」 随分と頭の低い長だと思ったが……また人間達の祝宴に呼ばれた事に少し戸惑った。 「参加しますよ!」 後ろから声がして、驚いて振り返るとフィーネが立っていた。仕方ない。 「そういう事で、私達は参加させてもらうから宜しく」 私は、長達に少しばかり微笑んだ。あんなに人間を見下していた私も変わったものだ。 「それでは!今晩六時より、大祝宴会とパレードを行います!時間までに、街の中心の『鉄神殿』にお集まりください!」 鉄神殿……この前には立ち寄らなかったが、街の名物の全て鉄で出来た神殿の事だな。 「あぁ、わかったよ」 私がそう言うと、長達は嬉しそうに帰っていった。 「人間は祝い事が好きねー」 何故か、起きていたリバレスもそう呟いた。 「そんな事はないですよ!ただ、魔の脅威が無くなった事が……それだけ嬉しいんです!私にはよくわかりますから」 フィーネが人間達の気持ちを代弁して微笑んだ。その表情は以前と違った喜びがあるようだ。 「まだ、祝宴まで時間があるし、散歩でもするか」 こうして、私達は時間まで街を散歩することにした。フィーネと二人きりが良かったが、そんなわがままも言えないな……
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