〜漂流二日目〜

「ルナさん!大変です!」

 その叫びと共に、私とリバレスは叩き起こされた!

「どうしたんだ!?」

 私はフィーネと共に甲板に出た。すると、もの凄い雨と風に襲われた!

「嵐か!」

 暴風雨で目も開けられない!

「どーしたのー?」

 そこに寝ぼけ眼のリバレスが現れた。

「リバレスさん!嵐です!来ちゃダメですよ!」

 と、体重の軽いリバレスをフィーネは心配した。

「帆を畳まなければ!」

 私は、強風でしなっているマストを確認した。今にも折れそうだ!それに、帆で風を受け続けているとこの船が転覆しかねない!

「私も行きます!」

 余りにも強い口調でフィーネがそう言ったので、私は思わず頷いた。

 暴風雨の中、私達二人は三本あるマストへと姿勢を低くして近付く……姿勢を高くすれば飛ばされそうになるからだ!

 私はメインのマストに近付き、手早く帆を畳んだ。その作業にはもの凄い力がいる事がわかった。人間一人の力では無理だ!

「フィーネ!大丈夫か!」

 私は叫んだが、声は嵐に掻き消される!目を凝らしてみた。すると……

「フィーネ!」

 彼女は、何と今にも折れそうなマストの帆に繋がる綱を剣で切っていた。正しい判断だ。そのマストは早く帆を畳むか切り離すかしないと、一分も持たない状態に見える。そして、暴風の中一人で帆を畳む力は無い。その様子を見て感心した私は、もう一本のマストの帆も手早く畳んだ。そしてもう一度振り返る!

「フィーネ、何処だ!?」

 振り返った先にフィーネの姿は無かった!開かない目を見開き四方を見渡す!

「ルナさーん!」

 風の唸りの中から、微かにフィーネの声が聞こえた!見ると……マストの綱に絡み取られて宙を舞っている彼女を見つけた!

「今行くからな!」

 私は、マストの根元まで行ったがフィーネは上空10mくらいで飛ばされそうになっている!早く助けなければ!

「翼があれば!」

 私は、そんな空しい希望の言葉を叫びながら必死の思いでマストによじ登っていく!そして、フィーネに繋がる綱を捕らえた!

「フィーネ!絶対に離すなよ!」

 全力で綱を引っ張る!腕の筋肉が軋むがそんな事は関係ない!あと3m位だ!

「ルナさんっ!」

 その叫びを聞いた瞬間、私達を繋ぐ綱は無情にも切れてしまった!

「フィーネー!」

 彼女の姿が荒れ狂う海へと投げ出される!そう思った瞬間だった。

「ヒュンッ!」

 私の目の前を光り輝く物体が通り過ぎて、フィーネを拾い上げた!

「リバレスか!?」

 私は炎のように燃える鳥に問い掛けた。

「ふぅー、やっぱりわたしがいないとダメねー『不死鳥』変化よー」

 元の姿に戻ったリバレスが私に笑いかけた。不死鳥は、天界に住み炎を纏う鳥でとても寿命が長い。

「リバレス、ありがとう!フィーネ、大丈夫か!?」

 私はリバレスに心から礼を言った後、フィーネを抱き起こした。

「ルナさん、帆は畳めましたか?」

 自分の体よりも、船の事を心配するフィーネ、私は思わず彼女を抱きしめた。

「バカ!無茶をするなって言ってるだろ!?私にはフィーネが大事なんだよ!」

 私の目から一滴の涙が落ちた……

「ごめんなさい……私も……ルナさんが大切ですよ」

 さっき死ぬ思いをしたのに、フィーネは優しく微笑んだ。何故、こんなにも健気なんだろう。私は、またもフィーネに惹かれていくのを感じた。

「(全く……妬けるわねー)さー、帆も畳んだし嵐が止むまで船室で大人しくしていましょー!」

 リバレスの掛け声の後、私達は三人船室で大人しくしていた。この日は嵐が収まる気配が無かった。

 

 フィーネは大事な人なんだ。さっき思わず叫んだ言葉に私は少し照れていた。

 そして、フィーネも私を大切だと言ってくれた。今日は、お互いが少し気まずくて余り話をしないまま眠りについた。

 

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