神術で、あんなにリアルな翼が造れるものか?
「『変化』の神術でね」
変化、天翼獣だけが使う事が出来る神術。
天・翼・獣・だけが!?
そんな、まさか……
「お母さんは、わたしが生まれた時から薄々気付いてた」
嘘だ、否、そう考えれば全てがしっくりくる!
「お父さんはずっと気付かなかった。たまに、わたしが気付かせる為の素振りをしてみても」
間違い無い。
こんなに寒いのに、目頭と頬が熱い。際限無く涙が溢れて止まらない。
私はリルフィの頭を胸に抱き寄せる。こんなに大きくなって……。ありがとう、私達の子供として生まれてくれて。
「おはよう……、リバレス」
「おはよう、ルナー」
私達は周りに誰もいない事を良い事に、声を上げて泣いた。
生まれた時からよく泣いていたリバレス。いつの間にか、私にとって何よりの心の支えになっていたリバレス。喜びも悲しみも、平穏も戦いも……、いつだって私達は一緒だった。
彼女はどんな時でも私の事を一番大切にしてくれた。私の肩の上で消えてしまうまで、ずっと!
その彼女が、生まれ変わって今、私の胸の中に居る。
10年、彼女は黙っていた。唯、私が気付くのを待って。私が今日リバレスを捜すという事も、察知していたのだろう。リルフィはシェルフィアと違って(シェルフィアの魂は、元はフィーネと別だった)、魂がリバレスそのものだ。だから、私が上空から捜せば直ぐに見付かる。
リルフィは上空からじゃなく、直ぐ傍で気付いて欲しかったのだ。だから、私にお願いして付いて来た……
ようやく二人の涙が収まると、リルフィは私の顔を見上げて笑う。
「ややこしいから、わたしの事はこれまで通りリルフィって呼んでね」
「ああ、解った」
私が大きく頷くと、リルフィが私の耳に口を寄せる。
「一言、言わせて」
「何だ?」
「気付くのが遅ーい!」
耳が痛い!だが、これが10年分の怒りなら安いものだ。
「本当にごめん」
そう言いながら私はリルフィの頭を、ポンポンと撫でた。
「もう……。ルナはお父さんになっても、変わらないね」
両手を広げ、『やれやれ』という仕草を見せる。お前も全然変わってないよ。
「さぁ、帰りましょ。お母さんが心配してる」
「シェルフィアも此処にいる事を知ってるのか?」
「当たり前じゃない、女の勘は鋭いのよ。ちゃんとお母さんに断りを入れてから来たんだから」
知らなかったのは私だけ。あぁ、我が家の主導権は今後完全に女性陣が握る事になるだろう。
リバレスが見付かって良かった。それも最高の形で。
これで私は、二人の為に何処までも強くなれるだろう。シェ・ファにも負ける気がしない。
そして、形はどうであれ私達は永遠に一緒だ。
先を飛ぶリルフィに追い付き、肩車をする。彼女が一番好きな場所。
本当に、ありがとう。