互いに意識を転送しながら、無数の刃を繰り出す!その攻防の衝撃だけで、聖域の建造物が消し飛んでいく。この衝撃を受ければ、一番力の弱いリルフィにとっては致命傷となるだろう。
「(シェルフィア、リルフィを連れて離れろ!ずっと傍にいる約束はしたけど、リルフィには危険過ぎる!)」
「(わかったわ!リルフィを安全な場所に連れて行ったら、いつでも加勢できるようにしておくから!)」
私は頷いた。そこに間髪入れず鋭い刃が私を両断しようと襲い来る!
「パキィィ……ン!」
咄嗟に防御はしたが、オリハルコンの剣が魔剣に圧し負けている!刃に細かな亀裂が走った!
「(エファロードともあろう者が、自分の責務を放棄して独善的な幸せの為に生きるなんてね!)」
フィアレスが漆黒の翼を広げて空に舞い上がる!
「(ならば、此処にいるお前はどうなんだ!?獄界の維持、深獄の封印、魂への干渉はどうなる!?)」
私もそれを追って飛び立った!
「(僕は君と違って、獄界を放棄などしていない!この世界を手に入れて、魔の住む理想郷にすれば良いだけの話だ!深獄の封印は、今は最低限やっている。君を倒したら、本気でやるさ!)」
「ゴォォ!」
意識の遣り取りの間に、空間が消失する程、高エネルギーの炎が交錯する!
「魂への干渉は、私と同じく必要ないと考えたみたいだな」
「愚問だね」
私は理解した。私と表裏一体の存在……フィアレス・ジ・エファサタンは、私と同じく自分の信じる道を切り開く覚悟を持っている事。その為には、自分の命を懸ける事も厭わない事。そして……やはり二つの存在は、相容れない事!
「ロード、サタンが築き上げた歴史を破壊し、混沌を生み出したルナリートに死を!」
その瞬間!空を暗雲が覆い、海が黒に染まる!そして……
「ゴゴゴゴ!」
黒い稲光がフィアレスに集り……闇物質の鎧に更なる力が漲る!それは、私……否、俺が獄界で会った先代獄王の影を遥かに凌ぐ力だ。
「その姿……エファサタンが戦いにのみ力を注ぐ完全なる戦闘態勢。久方振りだな。ルナリートでは無い、遠い記憶の中でさえそれを見たのはごく僅かだ。だが……俺は、お前に負ける訳にはいかない。この世界は大切な者の犠牲で築かれた!俺には、愛する者を守る義務がある!」
「シュウゥゥ!」
俺の体を禁断神術『滅』で覆う!これは、外部からの攻撃を無効化するエファロードの鎧だ。そして、この鎧の表出はエファロードとしての力の完全解放を意味する。